遺産分割協議
1 遺産分割とは
遺産分割とは、相続人が相続財産を分配することです。人が亡くなったら、その人の財産や負債が残されます。日本では、個人が財産を所有することが認められているので、亡くなった人の財産は相続人に引き継がれます。ただ、相続人は複数いることも多く、誰がどの遺産をもらうのかを決めなければなりません。そのための手続きが、遺産分割です。
2 遺産分割協議はどのように行うか
遺産を相談して分けることになった場合、「遺産分割協議」を行う必要があります。この協議に特別な方法があるわけではありません。ただ、次の点は気をつけなければなりません。
●相続人全員が参加して協議を行うこと
●協議の結果を書類に残すこと
遺産分割協議を行う相続人 分割協議は、必ず相続人全員で行わなければなりません。相続人に未成年者がいる場合は、その代理人の参加も必要です。相続人が1人でも欠けた状態で行うと、その結果は無効となります。
また、あとで問題が起こらないよう、協議の結果は書類に残すとよいでしょう。この書類のことを「遺産分割協議書」といいます。
3 遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書は、協議の結果の記録となる重要な書類です。
次のポイントに注意して作成しましょう。
わかる明確なタイトル
相続人として
分割したかを示す
1.相続人東京花子がする財産
(1)土地
東京都千代田区丸の内×丁目×番 宅地 200平方メートル
(2)建物
東京都千代田区丸の内×丁目 家屋番号:×番
木造瓦葺2階建 床面積110平方メートル
2.相続人東京一郎が取得する財産
(1)預貯金
〇〇銀行 丸の内支店 被相続人東京太郎名義の定期預金
口座番号 ××××××× 1,000万円
(2)株式
丸の内フィナンシャルグループの株式 5千株
3.相続人東京奈津子が取得する財産
(1)預貯金
〇〇銀行 本店営業部 被相続人東京太郎名義の普通預金
口座番号 ××××××× 1,000万円
4.〇〇銀行丸の内支店からの借入金(相続開始日の残高640万円)
は相続人東京一郎が負担するものとする。
ても、パソコン
で作成してもよい
なった財産を記載する不動産に
ついては、登記簿謄本を参考に、
正確に記入する
明確にする
実印を押す
※本資料は2020年7月末日現在の法律等に基づいて作成しております。また、内容につきましては、情報の提供を目的として一般的な法律・税務上の取扱を記載しております。このため、諸条件により掲載の内容とは異なる取扱がなされる場合がありますのでご留意ください。実際に相続手続を行うにあたっては、必要に応じて弁護士や税理士等と十分ご相談の上、ご自身の責任においてご対応くださいますようお願いいたします。
4 遺産分割の方法
遺産分割には「遺産分割協議」「遺産分割調停」「遺産分割審判」の3つの方法があり、基本的には「①遺産分割協議」→「②遺産分割調停」→「③遺産分割審判」の順で進めていくことになります。
遺産分割協議
遺産分割協議とは、相続が発生した際、被相続人による遺言書がない場合に相続人全員で遺産分割に関する話し合い(協議)を行うことを、遺産分割協議と言います。相続人同士の話し合いで遺産の分割方法や、だれが何を相続するかを決めるための第一歩になります。
遺産分割調停
遺産分割調停とは、遺産分割協議において相続人の間では話合いがつかない場合などに、家庭裁判所において、調停委員に間に入ってもらい話し合いによる解決を目指す手続です。
遺産分割調停では各相続人からの事情を確認し、必要に応じて資料等を提出してもらうなど、事情をよく把握したうえで、
- 各相続人がそれぞれどのような分割方法を希望しているか、
- その分配比率などはどうしてほしいのか
遺産分割審判
遺産分割調停でも話がつかなかった場合、遺産分割審判に自動的に移行されます。別途で審判申し立てをする必要はありませんので、そのまま調停員の指示に従ってください。
ちなみに、遺産分割事件には調停前置主義(いきなり裁判をすることはできず、まず調停をして解決できなかった場合に初めて裁判を起こせるという制度)はありません。
初めから「調停」または「審判」の手続きを申立てることも可能ですが、いきなり審判を申立てようとしても、まずは調停を申し立てて、裁判所の関与の下でできるだけ話し合いによる解決を図るよう促される可能性が高いです。
5 遺産分割の種類
遺産分割の方法は、相続人全員で決めることになるのでモメてしまう可能性が大きいものです。
例えば、相続財産が現金のみであれば、1円単位までかんたんに分割できますが、土地や建物など不動産となるとかんたんに半分ずつとはいきませんのでとても大変です。
相続財産を具体的に分割する方法としていくつかご紹介いたします。
現物分割(げんぶつぶんかつ)
この家は長男に相続し、あの車は長女にあげようといったように、その名のとおり遺産そのものを現物(そのまま)で分ける方法です。
現物分割では現物の性質上各相続人の相続分をきちんと分けることは難しいため、相続人の間で取得格差が大きい場合は一部の資産を売却してその代金で調整したり、沢山相続した人が自己資金で調整(代償分割※後述)したりします。
換価分割(かんかぶんかつ)
換価分割とは、不動産や株券などの相続財産を一部又は全部売却し現金にしてから相続人全員で分ける方法のことを言います。
例えば、亡くなった夫の相続財産が不動産2筆のみの場合、不動産をすべて売却し、相続財産をすべて金銭として、その金銭を妻と長男で2分の1ずつ相続する方法です。
これはとても分かりやすく現金にすることで1円単位まで遺産分割することが可能です。
ただし、自宅だけはどうしても残したいという場合は、この方法は難しい選択になってしまいます。
また、不動産や株券などはいつ売却するかによって価格も変わり、不動産などを売却するとなると税金の支払いも必要になり、相続財産の金額が目減りする可能性があるので、その点には注意が必要となります。
代償分割(だいしょうぶんかつ)
代償分割とは、例えば、亡くなった父親の相続財産が自宅のみ、相続人は長男と次男のみという場合で、長男が相続財産である自宅を相続し、その自宅を相続した代わりに長男が次男に代償金1000万円を支払うといったものになります。主に不動産を相続した相続人の1人が、他の相続人に現金等を支払う方法です。
これは、相続人の1人が自宅であったり、被相続人(亡くなった方)の会社を継ぐ場合など、分割が難しかったり、売却も難しい場合に使われる方法です。
ただし、現金等で代償分を支払える資産がないと代償分割を選択することが難しいとされています。
共有分割(きょうゆうぶんかつ)
共有分割とは、例えば、亡くなった夫の相続財産が自宅のみ、相続人は妻と子が1人の場合、自宅を妻が2分の1、子が2分の1ずつという形で相続して、相続人全員で共有する方法です。
この場合、不動産を相続人全員がそれぞれの持分で共有するので自宅等を売らなくて済みますが、問題は売却する時に共有者全員の同意が必要になるという部分で後々、様々な制約を受けます。
そして、不動産を共有している相続人の1人が亡くなった場合は、不動産を共有する人が多くなっていき、共有者全員の合意がないと売却することも難しくなってしまいます。
共有者の人数が多くなればなるほど全員の合意というのは、大変になります。