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強制わいせつ


1、強制わいせつとは

そもそも「強制わいせつ」とはどのような意味なのか、理解しておきましょう。

①「わいせつ」とは何か?

わいせつにはいろいろな解釈がありますが、法律的には「一般社会の性的な道義観念に反する態様で、いたずらに性欲を興奮させたり刺激したりして人の正常な性的羞恥心を害すること」と考えられています。
平たくいうと「いやらしい行為」「みだらで性的羞恥心を害するような行為」がわいせつ行為になります。具体的には、女性の胸やお尻を触ったり裸にしたり性的なポーズを取らせて写真撮影をしたりすると、わいせつ行為です。

強制わいせつ罪は、こうしたわいせつ行為を暴行・脅迫を用いて無理やり行ったときに成立する犯罪です。

強制わいせつになる行為の例

  • 下着の中まで手を入れて性器などを直接触る
  • 着衣の上や直接、胸やお尻を執拗(しつよう)にもむ
  • 無理やり服を脱がせて裸にする
  • すれ違いざまに胸を揉む、無理やりキスをする
  • 後ろから抱きつく、押し倒す

②強制わいせつと痴漢の違い

強制わいせつといわゆる痴漢は、重なる部分もありますが異なる犯罪です。

強制わいせつ

内容 暴行や脅迫の手段を用いて被害者にわいせつ行為を行ったときに成立
被害者が13歳未満の場合 暴行や脅迫を用いなくても強制わいせつ罪が成立する
刑罰 6ヶ月以上10年以下の懲役刑

痴漢

内容 暴行や脅迫の手段を使わなくても成立
被害者が13歳未満の場合 被害者が13歳未満かそれ以上かによる取り扱いの違いはない
刑罰 ほとんどの場合「迷惑防止条例違反」という罪になり、刑罰は6ヶ月以下の 懲役刑または50万円以下の罰金刑などと強制わいせつよりも軽い刑となる

ただし、痴漢の中でも特に悪質なケースでは、強制わいせつ罪が成立する可能性があります。

2、強制わいせつと強姦の違い

強制わいせつと強姦(強制性交等)の違いについてもみておきましょう。
強姦(強制性交)は、暴行または脅迫によって相手の反抗を抑圧し、強制的に「性交」や「性交類似行為(口淫や手淫、肛門性交などを含む)」をすることです。
13歳未満の被害者の場合、暴行脅迫を手段としなくても性交または類似行為を行うだけで強制性交等罪が成立します。
強制わいせつは、性交や性交類似行為をしないことが前提なので、そこが根本的に違います。また強姦罪(強制性交等罪)の刑罰は5年以上の有期懲役刑であり、強制わいせつと比べて大変重いです。

3、強制わいせつ罪のポイント

強制わいせつ罪で逮捕されたとき、以下のようなことが重要ポイントとなります。

①被害者の訴えがなくても、逮捕・起訴が行える

強制わいせつ罪は、平成29年まで「親告罪」でした。親告罪とは、被害者による刑事告訴がないと起訴されない犯罪です。そこで今でも「被害者が刑事告訴しなかったら逮捕されない」と思われているケースがあります。
しかし現在、法改正によって強制わいせつ罪は親告罪ではなくなっています。
そこで被害者による刑事告訴が行われなくても、警察が強制わいせつの事件を察知して重大だと考えれば、捜査が開始されて加害者が逮捕される可能性があります。

②相手が13歳未満であれば同意があっても罪になる

強制わいせつ罪は、基本的に暴行脅迫を手段としてわいせつ行為をしたときに成立する犯罪です。
しかし、前述の通り、相手が13歳未満の場合、手段を問われません。暴行や脅迫を行っておらず、相手が同意していても強制わいせつ罪が成立するので注意が必要です。

③相手が13歳未満だと知らずにわいせつ行為を働いたら?

相手が13歳未満であることを知らないままわいせつ行為をした場合は、「故意」がないために強制わいせつ罪にならないのでしょうか?
実は、故意がないことを理由に罪を免除してもらえる可能性は低いです。
相手の見かけや言動からして、当然13歳未満だと気づくべきであったと判断されると、たとえ加害者本人が気づいていなかったと主張しても「故意がある」と認定されてしまうからです。
また、そもそも相手が18歳未満の場合、強制わいせつにならなくても淫行条例などに引っかかる可能性があるので、幼そうな少女にはわいせつ・みだらな行為をしないようにしましょう。

4、強制わいせつ罪で起訴された場合の刑罰

強制わいせつ罪で逮捕されると、起訴される可能性も高いです。
もしも刑事裁判で有罪になったらどの程度の刑罰を科されるのでしょうか?

①強制わいせつ罪

通常一般の強制わいせつ罪の場合の刑罰は、6ヶ月以上10年以下の懲役刑です。
罰金はなく必ず懲役刑となります。

②準強制わいせつ罪

準強制わいせつ罪とは、人の心神喪失状態や抵抗不能な状態に乗じたり、心神喪失や抵抗不能状態にさせたりしてわいせつ行為をすることです。
たとえば酒を飲ませて酩酊(めいてい)状態にさせたり薬物の投与によって意識を失わせたり、相手をしばって抵抗できない状態にしたりしてわいせつ行為を行う場合などです。
刑罰は一般の強制わいせつ罪と同じで、6ヶ月以上10年以下の懲役刑です。

③強制わいせつ致死傷罪

強制わいせつ行為の最中に、相手を傷つけたり死なせてしまったりすると、強制わいせつ致死傷罪となります。
その場合の刑罰は、無期懲役刑または3年以上の有期懲役刑となり、非常に重いです。

④監護者わいせつ罪

監護者わいせつ罪とは、18歳未満の未成年者に対して、親や養親などの監護者がその影響力を使ってわいせつ行為をしたときに成立します。
この場合、暴行脅迫や心神喪失、抗拒不能などの要件は不要です。
刑罰は通常の強制わいせつと同様、6ヶ月以上10年以下の懲役刑です。

5、強制わいせつでの示談の重要性

強制わいせつ罪で逮捕された場合には、被害者と示談をすることが重要です。

①示談ができれば、処分を軽くしてもらいやすい

強制わいせつは、被害者に対する重大な権利侵害であり「不法行為」に該当します。そこで強制わいせつの犯人は、被害者に対して慰謝料を支払わねばなりません。 そのための話し合いが「示談」です。示談が成立すると、刑事的にも加害者に対する情状が良くなり、処分を軽くしてもらえます。 そこで強制わいせつで逮捕されたときには、早急に被害者と示談することが重要です。

②被害者と示談するタイミング

早ければ早いほど良いです。逮捕前に示談ができれば被害届を提出されないので、逮捕される可能性が低くなります。
逮捕後であっても、検察官による処分決定前に示談ができれば、不起訴になる可能性もあります。起訴までに示談が間に合わなかった場合、刑事裁判中に示談ができれば執行猶予判決になる可能性が高まりますが、判決までに示談できなかった場合、実刑判決が出てしまう可能性も高くなります。
示談が遅くなればなるほど不利益が大きくなるので、強制わいせつ行為をしてしまったら、一刻も早く被害者に連絡を入れて謝罪を行い、示談交渉を開始しましょう。

③未成年が相手だった場合は、原則親権者と示談

強制わいせつで示談をするときには、基本的に被害者本人と話し合いを進めます。
しかし被害者が未成年者の場合には、本人ではなく親権者と話をする必要があります。未成年者には示談の契約などに必要な行為能力が認められていないからです。

未成年者相手に一生懸命話をして了承を得ても、親が反対したら意味がなくなってしまうので、きちんと当初から相手の親に謝罪を入れて、示談の話を進めましょう。

6、強制わいせつの示談金

強制わいせつ罪の示談金は、行為が悪質な場合や相手がけがをした場合、相手がトラウマ(心的外傷)になって仕事を辞めたケース、加害者の社会的地位が高いケースなど、ケースによって異なります。
あなたのケースで妥当な示談金額を知りたい場合は、弁護士まで相談してください。

7、強制わいせつで逮捕されたら弁護士へ

強制わいせつ罪で逮捕されたら、一刻も早く被害者と示談交渉を開始して、検察官による処分決定前に示談をまとめる必要があります。
しかしながら、事実上、弁護士をつけなければ、検察官から被害者の連絡先を教えてもらうことさえできず、示談をすることができない場合が多くあります。
また、不利益な自白調書を取られないように、逮捕当初から弁護士による適切なアドバイスを受けることも重要です。さらに会社や学校などでの不利益をなるべく小さくするため、弁護士が対応できることや、家族にアドバイスできることもあります。強制わいせつは、放っておくと懲役刑となり、実刑判決も出る重い犯罪です。

オリエンタル法律事務所の弁護士があなたやあなたのご家族をサポートいたしますので、 逮捕されたら今すぐにでもご連絡ください。

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