「自分が亡くなったとき、家族に争ってほしくない」。そのような願いを法的な力に変えるのが遺言書です。本稿では、遺言書の種類・要件・よくある落とし穴を、実務経験に基づき丁寧に解説します。
目次
1. なぜ今、遺言書が必要なのか
2. 遺言書の3つの種類
3. 自筆証書遺言の書き方と要件
4. 公正証書遺言のメリット・デメリット
5. 遺言書が無効になるケースと注意点
6. 遺言書作成で弁護士に相談すべき理由
1. なぜ今、遺言書が必要なのか
日本では相続問題が家庭裁判所に持ち込まれる件数は年間15,000件を超えており、そのうち遺産総額が5,000万円以下のケースが約7割を占めます。つまり「うちには財産が少ないから大丈夫」という考えは危険です。
遺言書が存在すれば、原則としてその内容が法定相続よりも優先されます。遺族が何度も顔を合わせて協議する手間を省き、故人の意思を明確に示すことができます。
遺言書は「死後の意思表示」ではなく、「生前から家族への最後のプレゼント」です。法的効力と感情的な安心、両方を兼ね備えた重要な文書です。
2. 遺言書の3つの種類
民法が定める普通方式の遺言には、主に以下の3種類があります。それぞれの特徴を理解したうえで、状況に合った方式を選択することが重要です。
自筆証書遺言
* 全文・日付・氏名を自筆
* 費用ゼロで作成可能
* 法務局での保管制度あり
* 形式不備で無効リスク
公正証書遺言(推奨)
* 公証人が作成・保管
* 無効リスクが極めて低い
* 証人2人が必要
* 費用がやや高め
秘密証書遺言
* 内容を秘密にできる
* 実務ではほぼ使われない
* 自筆・ワープロ可
* 紛失リスクあり
実務上は「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」のどちらかを選ぶケースがほとんどです。費用や利便性だけでなく、財産の内容・家族構成・紛争リスクを踏まえて選択することをお勧めします。
3. 自筆証書遺言の書き方と要件
自筆証書遺言は、民法968条が定める要件を一つでも欠くと無効になります。
必須要件
*全文を自筆で書くこと(ワープロ・代筆は不可。ただし財産目録はPCで作成可)
作成日付を正確に記載すること(「令和〇年〇月吉日」は無効)
氏名を自署すること
押印すること(認め印でも法律上は有効だが、実印が推奨)
訂正がある場合は所定の訂正方式に従うこと
令和2年より「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が施行され、法務局に自筆証書遺言を預けることが可能になりました。保管された遺言書は家庭裁判所の検認が不要となり、相続人が発見できないリスクも回避できます。
4. 公正証書遺言のメリット・デメリット
公正証書遺言は公証役場において、公証人が当事者から聴取した内容をもとに作成します。証人2名の立会いのもと、公証人が内容を読み上げ、その場で署名・押印を行います。
主なメリット
形式上の不備による無効はほぼ起こりません。原本が公証役場に保管されるため、紛失・改ざんの心配がなく、家庭裁判所における検認も不要です。また、認知症などにより判断能力が低下する前に作成することで、意思能力の有無をめぐる争いを防ぐことにもつながります。
費用の目安
公証人の手数料は遺産総額によって異なります。相続財産が1,000万円の場合は約23,000円、5,000万円の場合は約43,000円が目安です。弁護士に依頼する場合は別途報酬が発生しますが、内容の精度と紛争回避を考えれば費用対効果は高いと言えます。
5. 遺言書が無効になるケースと注意点
実務で相談を受ける中でも特に多いのが、「遺言書を書いたつもりだったが、後から法的に無効だとわかった」というケースです。代表的なものを以下に挙げます。
*日付が「吉日」「〇月上旬」など不明確だった
財産目録をPCで作成したが、各ページへの署名・押印を忘れた
記載した不動産の地番・面積が登記簿と一致していなかった
夫婦で1通の遺言書に連署した(共同遺言は民法で禁止)
作成時に十分な意思能力がなかったと後から争われた
また、遺言書が有効であっても、遺留分を侵害している場合には相続人から遺留分侵害額請求を受けるリスクがあります。特定の相続人に対して多く遺贈する際は、遺留分との兼ね合いを弁護士に確認することをお勧めします。
6. 遺言書作成で弁護士に相談すべき理由
市販の書式や書籍を参考に遺言書を作成することは可能ですが、法的紛争を予防するという観点では、弁護士への相談が有効です。弁護士は次のような観点から関与します。
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財産の洗い出しと法的な表記の確認(不動産・預貯金・有価証券等)
遺留分を考慮した内容設計
遺言執行者の指定と就任受諾
公正証書作成における公証役場との連携
作成後の財産変動に応じた見直しのサポート
当事務所では、遺言書の作成から遺言執行まで、相続に関する法的サービスをワンストップで提供しています。税理士・公認会計士とも密接に連携しており、税務面での最適化も含めた総合的なご支援が可能です。
遺言書の作成・見直し・遺言執行のご相談は、当事務所にお任せください。 初回ご相談の際は、事案の概要・財産の状況をできる範囲でお聞かせいただけると、よりスムーズに対応できます。
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