文字サイズ

お知らせnews

合同会社とは(合同会社の設立から運営の注意点)

 

会社法で認められた法人の組織形態の一つであり,その社員(出資者)の全員が有限責任を負う持分会社です(会社法5764項)。ここで言う社員とは,会社の従業員のことではなく,会社の出資者のことを意味しています。合同会社の出資者である社員は,有限責任のみを負うことから,会社の債権者に対して出資の範囲内においてのみ責任を負うことになります。債権者の側からすれば,合名会社や合資会社と異なり,出資者である社員が,会社の債務について個人的責任を負わないことから,会社の社員が個別に連帯保証をしたような場合を除き,会社の財産のみがその債権の引当となることを意味します。

合同会社は,平成18(2006)年の『会社法』が施行されるのと同時に,新しく誕生した形態となります。アメリカでは類似の会社形態がLLC(Limited Liability Company)と呼ばれているため,日本でも合同会社を指して「日本型LLC」と呼ばれることがあります。

 

1有限責任と無限責任

まず,合同会社の説明するにあたって,「有限責任」「無限責任」という言葉の解説をします。

有限責任とは,会社の設立にあたって出資した場合,その人の会社の負債に対する責任は出資額を上限とするという意味です。

例えば会社設立にあたって100万円を出資した場合,その会社が倒産するなどして負債を支払う義務が生まれたとしても,その上限は100万円となります。

他方,無限責任は,会社の負債に対して全額を支払う責任を負うことを意味します。一般的には,万が一の場合に責任範囲が小さくなる有限責任を負う方がリスクが少なく望ましいといえます。

会社の種類である「合同会社」「合資会社」「合名会社」「株式会社」の大きな違いとして,出資者が追う責任が有限責任か無限責任かという点が挙げられます。

合同会社・株式会社の出資者と合資会社の一部の出資者は有限責任社員,合名会社の出資者と合資会社の一部の出資者は無限責任社員です。

合同会社と株式会社の出資者は有限責任社員となるため,会社の大半はリスクの少ないこれらの会社形態をとっています。

 

2 合同会社に向いている会社

合同会社は,所有と経営が未分離であり,出資者である社員が自ら会社の経営を行うことを想定しています。

また,合同会社は,設立手続きが簡単であり,会社の運営面でも自由度が高いことから,家族形態で事業を行うことを検討している会社や,資産家が個人の資産管理を目的として設立する会社などに適している会社と言えます。

東京商工リサーチの統計によれば,2021年度に設立された会社のうち,株式会社が96,025社(前年比10.8%増)であるのに対し,合同会社は36,934社(前年比10.9%増,構成比25.5%)となっており,有限責任会社全体の4分の1強が合同会社として設立されています。合同会社の設立される件数や割合は毎年増加していると言えます。ちなみに, 特定非営利活動(NPO)法人が1,504社(前年比12.0%増,構成比1.0%)と大幅に増加し,前年(2020年)の15.0%減から一転しました。

上記のとおり,合同会社は,アメリカのLLCLimited Liability Company)を参考に制度が設けられた会社ですので,海外の投資家にとってはなじみのある制度かもしれません。実際にもアップルジャパンやアマゾンジャパンは合同会社の形式で会社が設立されています。

 

3 合同会社の特徴

(1) 役員の任期がないこと

本来,有限会社の取締役・監査役などの役員,合同会社の業務執行社員・代表社員には,株式会社にあるような任期(2年とか10年で改選など)はありません。所有(株主)と経営(役員)が一致することの多いこれらの会社では「自分自身に任期を定める」ことになり,ほとんどの場合には無意味だからです。

株式会社の場合,取締役や監査役については任期の定めがあり,任期が満了した取締役や監査役については,株主総会を開催して改選や重任の決議を行う必要があります。また,取締役や監査役の選任については,登記事項とされていますので,取締役や監査役の改選や重任の決議がなされた場合には,法務局に申請して登記を行う必要があります。

他方,合同会社の場合は,社員,業務執行社員などについて任期の定めはありませんので,役員の改選手続きは必要ありません。

そのため,手続き的な負担は大幅に軽減されることになります。

 

(2) 決算公告が必要ないこと

株式会社の場合,毎年必ず決算公告を行う必要があるとされ,官報に掲載するか,日刊新聞紙に掲載するか,電子公告を行うかを選択しなければなりません。

官報に決算公告を掲載する場合は,約6万円の必要が必要となり,日刊紙に掲載する場合は,それ以上の費用が掛かると考えられます。電子公告の方法によって決算内容を開示する場合には,費用面での節約効果はありますが,インターネットの検索で,会社の財務内容が容易に外部に知られてしまうという懸念があります。

他方,合同会社の場合は,決算公告自体が不要となりますので,決算公告に要する費用を節約することができると同時に,会社の財務内容が外部に知られる可能性がなくなります。

 

(3) 剰余金の分配を自由に行うことができること

株式会社の場合,剰余金の分配を行うには,株主総会で剰余金の分配に関する決議を行う必要があります。また,剰余金の分配は各株主の出資比率に応じて行われることになります。

これに対して,合同会社の場合は,定款に定めがある場合には,定款の定めに従って剰余金の分配を行うことができますので,株主総会のような決議を必要としません。そして,株式会社の場合と異なり,社員の出資比率とは関係なく,剰余金の分配方法を定めることができます。例えば,資本金の額が100万円の合同会社があり,甲が60万円を出資し,乙が30万円を出資し,丙が10万円を出資している場合であっても,定款で定めがある場合には,甲,乙,丙に対して出資額とは関係なく,同額の配当をするという事も可能です。但し,会社法では,損益分配の割合について定款の定めのない時は,その割合は,各社員の出資の価額に応じて定めるとされていますので(会社法6221項),定款の定めのない場合には,出資割合に応じて配当がなされることになります。

 

(4) 資金調達

株式会社の場合は,間接金融として金融機関から資金の借り入れを行うほか,直接金融として株式を発行して資金の調達を行うことが可能です。

これに対し,合同会社では,新株の発行ができませんので,直接金融を行うことができず,資金調達の方法が制限されることになります。また,株式会社の場合と異なり,株式上場による資金調達を行うこともできません。合同会社の資金調達は選択肢が限られ,大規模な資金を調達することは難しいのが実状です。その理由は,合同会社の性質と社会的知名度や信用度の低さにあります。

その結果,合同会社における資金調達は,社員からの借り入れや社員からの出資,金融機関その他の第三者からの借入などに限られることになります。

 

(5) 出資金の払い戻し

株式会社では,会社が減資手続きにより資本金の一部の払い戻しを実行する場合を除いて,会社が解散する場合を除いて出資金の払い戻しを請求することはできません。つまり,株式会社の株主は,株式を他の者に売却して,資金の回収を行うほかありません。

これに対し,合同会社では,会社の定款に定めた方法により,出資金の払い戻しを受けることができるとされています。ここでいう合同会社での出資の払い戻しとは,社員が加入時または加入後の増資で出資した財産の払い戻しを受けることです。対象となるのは資本金と資本剰余金です。利益剰余金は,出資ではなく合同会社が稼いだ利益で構成されているため,出資の払い戻しの対象ではなく,持分の払い戻しとして扱われます。

 

4 合同会社の運営について

合同会社には,株式会社でいう取締役,取締役会,株主総会の制度はありません。そのため,出資者である社員が自ら会社の業務を運営するのが原則です。

社員が一人の場合は,その社員が自ら会社の業務を執行することになります。一方,社員が2人以上の場合は,定款に別段の定めがある場合を除き,社員の過半数をもって決定するとされています。例えば社員が2人の場合は,1人では過半数になりませんので,2人の社員の同意により業務を執行することになります。2人の社員のうち,1人でも反対をした場合は,当該業務の執行を行うことはできません。また,社員が3人の場合は,2人または3人の同意によって業務の執行が行われます。1人の社員が反対した場合でも,残りの2人が同意している場合は,過半数の社員が同意したことになりますので,当該業務を執行することができます。但し,日常の常務については,他の社員が異議を述べた場合を除き,各社員が単独で行うことができます。

 

(1) 出資割合と業務執行の関係

上記の通り,合同会社の業務については,社員の過半数をもって決定するのが原則です。出資の割合は関係ありません。例えば,資本金の額が100万円の合同会社があり,A60万円を出資し,B30万円を出資し,C10万円を出資したとします。

この場合,株式会社であれば,Aは株主総会で過半数の議決権を行使することができますので,株主総会における通常の決議については,Aの賛否によって決定されることになります。

これに対して合同会社の業務執行は,社員の頭数によって決定されることになります。従って,Aが反対しても,BCが賛成する場合には,社員の過半数が賛成したことになりますので,当該業務を執行することができることになります。

 

(2) 業務執行社員を定めた場合

合同会社の定款において業務執行社員を定めた場合は,その業務執行社員が合同会社の業務を行うことになります。業務執行社員が1名の場合は,その1名の業務執行社員が単独で決定し,業務を執行することになります。合同会社の定款において業務を執行する社員を2人以上定めた場合は,定款に別段の定めのある場合を除き,業務を執行する社員の過半数をもって決定することになります。

例えば,合同会社の業務執行社員が2名の場合は,両方の業務執行社員が同意しない限り業務を執行することができません。また,合同会社の業務執行社員が3名の場合は,2人の業務執行社員の同意によって業務が行われることになります。例えば,業務執行社員が3人いる合同会社で,業務執行社員のうち2人が事業譲渡に賛成した場合は,残りの1人の業務執行社員が事業譲渡に反対する場合であっても,業務執行社員2人の同意によって事業の譲渡を行うことができることになります。上記の通り,過半数かどうかは,業務執行社員の頭数によって決定されますので,出資金の多寡は関係ないことになります。例えば,出資金の60%を出資している業務執行社員が反対している場合であっても,残り2人の業務執行社員が賛成する場合は,事業譲渡を行うことができることになります。但し,定款において,「事業譲渡については業務執行社員全員の同意が必要」といった別段の定めがある場合には,その定めに従うことになります。もし,過半数の資本金を出資している社員が多数決で負ける可能性がある場合には,全社員の同意がない限りできない事項を定款に定めることで,他の社員が勝手に業務執行を行うことを阻止することができることになります。定款の作成の際には,このような状況が出現する可能性についても検討しておくことが重要です。

 

(3) 業務執行社員の解任

業務を執行する社員を定款で定めた場合は,定款に別段の定めがある場合を除き,正当な事由がある場合には他の社員の一致によって解任することができるとされています(会社法5915項)。従って,3人の業務執行社員のうち1人の業務執行社員を業務執行社員から解任しようとする場合は,残りの2人の業務執行社員が賛成することで解任することができることになります。ここでも,出資の金額は関係ないことになります。

例えば,資本金の額が100万円の合同会社があり,甲が60万円を出資し,乙が30万円を出資し,丙が10万円を出資している場合,乙と丙が同意することで,甲を業務執行社員から解任することができることになります。

 

(4) 業務執行社員の責任

業務執行社員は,会社に対して善管注意義務,忠実義務を負い,競業禁止,利益相反取引禁止,任務懈怠による損害賠償責任を負うことなど,株式会社の取締役と同様の責任を負うことになっています。上記の通り,業務執行社員を解任するためには,他の社員全員の一致によってはじめて行うことができることになります。そこで,他の社員のうち一人でも反対を行う社員がいる場合は,その業務執行社員を解任することはできないことになります。

この場合,業務執行社員に対する責任追及の方法としては,損害賠償責任の追及の方法によらざるを得ないことになります。なお,業務執行社員が,業務の執行をするにあたって不正の行為をし,または業務を執行する権利がないのに業務の執行に関与した場合は,持分会社の社員の除名事由にあたることになります(会社法859条)。この場合,当該社員以外の社員の過半数の決議により,訴えをもって当該社員の除名を請求することができます。

 

(5) 合同会社の解散

合同会社の解散・清算は,株式会社と同じような手続です。合同会社は合名会社や合資会社と同じ,「持分会社」ですが,「任意清算」の手続は認められていません。株式会社と同様,「法定清算」の手続きによることとなります。

解散した合同会社は,会社の本店の所在地を管轄する法務局で解散登記,清算結了登記をしなければいけません。

会社は解散することによって,一旦事業活動を停止します。

そして,会社に残った財産を整理する「清算」手続が完了すると,会社は法律上消滅します。「解散」だけでなく「清算」まで完了してはじめて,法律上「会社を閉じる」(清算する)ことができます。

合同会社の解散は,会社法上,次の事由によりなされることとなっております(会社法641条)。

  1. 定款で定めた存続期間の満了
  2. 定款で定めた解散の事由の発生
  3. 総社員の同意
  4. 社員が欠けたこと
  5. 合併
  6. 破産手続き開始の決定
  7. 会社の解散を命ずる裁判

 

5 合同会社の倒産方法

合同会社が倒産する場合に選択することができる方法は,法人破産か民事再生です。法人破産は,会社の財産をすべて処分(換金)して債権者に配当します。配当しても不足する債務については,破産をすることで会社の法人格は消滅しますので,法人の消滅とともに消滅することになります。合同会社の社員は有限責任とされますので,出資の限度で責任を負いますが,残債務を返済する義務を負わないのが原則です。

ただし,合同会社の代表社員が会社の債務の連帯保証人などになっている場合,連帯保証人である代表社員が債務を引き継ぐことになります。

もし返済できるような金額でない場合には,代表社員個人の自己破産を検討する必要があります。

他方,民事再生は,会社の存続が前提となります。会社が存続するので,事業の継続が可能です。

裁判所に再生手続きを申立て,一部の債務の支払いをするので,残りの債務は免除してもらうという,債務の減額をする手続きです。

 

これらの申立ては,業務執行社員であれば可能であり(破産法1913号),原則として業務執行社員全員の同意が必要です。但し,手続開始の原因となる事実を疎明することにより全員の同意がなくとも破産の申立ては可能と考えられます(破産法193項)。

 

6 最後に

合同会社にて社員権販売スキームなどの運営は実際には見た目よりかなり難しいのが現実です。そのため,一般的な会社が,専門家の関与もなく,自社役員と従業員のみでこのようなスキームを構築するのはほとんど無理であると思われます。

当事務所は,多数の企業様から問い合わせを頂いており,現在までに30社の企業様の合同会社の社員権スキームの支援を行い,現在も10社の運用サポートをしています。 

様々な面から検討を加え,健全かつ合法的に運営が行えるよう全力でサポートいたしますので,どうぞお気軽にご相談ください。

ニュース一覧

事務所概要

名称 オリエンタル法律事務所
弁護士 佐野太一朗
連絡先
TEL: 03-6450-4832
FAX: 03-6450-4833
所在地 〒106-0032
東京都港区六本木4-10-7
エルビル5階

Googlemap
アクセス 六本木駅
6番出口徒歩1分