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事業承継

1 事業承継とは

事業承継とは、会社の経営を経営者が後継者へ引き継ぐことを言います。

現在、中小企業の多くが事業承継の問題に直面しています。経済産業省が公表した資料によれば、中小企業の経営者の平均引退年齢は70歳前後であるのに対し、経営者の50%以上が60歳以上となっているため、多くの中小企業にとって事業承継は喫緊の課題となっておりますが、実際に事業承継が行われている中小企業は少ないのが現状です。
事業承継は単なる相続の問題ではなく、会社の存続に係わる極めて重大な経営課題であり、慎重に検討したうえで進めていく必要があります。

お客様の多様なニーズに対し、オリエンタル法律事務所では、銀行・信託・不動産等の各種機能を融合させた総合的なご提供することを通じて、最良のパートナーであり続けることを目指しています。

株式の相続による会社の事業承継には、手続きや相続税評価などの観点から難しい問題が潜んでおり、適切に対応しなければ後のトラブルの種になりかねません。

2 事業承継の重要性

(1)事業承継に失敗すると廃業のおそれが高まる

適切な事業承継を行うことができなかった場合、優良な事業が廃業に追い込まれる可能性が高まります。
いったん廃業してしまえば、会社の物理的な資産はもちろんのこと、特許などの知的財産や研究開発の結果や過程、これまで培ってきた会社のノウハウや信頼などの見えない資産を喪失することになります。

(2)事業承継には時間がかかるので準備をしておく必要がある

事業承継には、手続きなどに相当の時間がかかります。そのため、事業承継を進めている最中に経営者が倒れてしまったり、認知症にかかったりするなどの不意の事態が生じてしまい、事業の継続に大きな支障が生じてしまうことがあります。
特に、株式や事業用資産に比べると、知的資産の承継には多くの時間がかかる。業種によっては数年単位の時間を要するため、特に知的資産の承継には早めに取り組んでおきたい。

3 事業承継の方法

事業承継の方法を検討するにあたって、まず、会社のキャッシュフローや知的財産、物理的な資産や負債の状況、現状や将来の見込みについて把握する必要があります。また株式の保有状況や経営者の個人資産の状況も把握しなければなりません。

その後、親族内承継をするのか従業員承継をするのかM&Aを利用するのかを決めて、具体的にいつどのようなことを行って事業承継を進めていくのか、事業承継計画を策定する必要があります。

事業承継は大きく分けて3つの方法があります。
ここ10年では、①の割合が減少し、②③などのいわゆる「親族外承継」が増大し、全体の6割超を占めている印象があります。

① 親族への承継

現経営者の子どもが後継者となるケースが主ですが、経営者の甥や娘婿がなったり、将来の子どもへの中継ぎとして、配偶者が一時的に後継者となる場合もあります。
親族への承継においては、自社株式や事業用資産の後継者への集中、生前贈与や遺言の活用と遺留分への配慮、相続税への配慮が重要です。

② 親族以外(従業員など)への承継

社内へ承継する場合は番頭各の役員(副社長や専務等)や若手経営陣、社外へ承継する場合は取引先や取引金融機関から招聘した人物が後継者となるケースがあります。
ここでは、後継経営者への株式や事業用資産の集中、株式等買取資金の調達、個人保証・担保が問題となります。
ただし、後継候補者が経営への強い意志を持っていないと、事業承継が円滑に進まないという問題点があります。

③ M&Aによる承継

会社の売却といっても、手法は様々であり、株式譲渡・合併・会社分割・事業譲渡・株式交換・株式移転などがあります。大まかな流れとしては、売却先の探索、売却に耐えうる会社へ磨きあげ、M&A手続の法的側面でのサポート、売却価格の算定となります。
ただし、希望条件(従業員の雇用、売却価格等)を満たす買い手を捜すことが困難だという問題点があります。

4 事業承継におけるオリエンタル法律事務所の役割

事業承継の際、弁護士は以下のようなサポートを行います。

(1)会社の現状調査と事業承継計画の立案

まずは、会社の現状把握を行い、事業承継計画の策定をすることになります。
会社資産、負債の状況や株式の保有状況、相続人の関係などの調査を行ったうえ、状況に応じた事業承継計画を作成します。

(2)株式の承継をサポート

株式会社においては、多くの株を保有する株主が様々な決定権を持つことになります。そのため、事業承継では、株式の承継が非常に重要です。その際、後継者以外の相続人による遺留分対策も行いながらなるべく後継者へ株式を集中させることを策定します。このとき、贈与税や相続税に対する配慮もすることになります。
詳細は以下に記載しましたので、最後までお読みいただけますと幸いです。

(3)遺産相続トラブルを発生させない

不用意に後継者へ遺産を集中させてしまった場合には、他の相続人が遺産の分割方法に納得しないとして、相続人同士で法的紛争が生じたり、遺留分の請求がされる可能性が高まります。
遺留分とは、相続人が相続財産に対して法律上最低限請求できる部分のことです。詳しくは、「遺留分」のコラムをご覧いただければと思います。
遺留分対策を適切に講じていない場合には、後継者が先代の死後に遺留分として多額の金銭を請求される危険があります。

この遺留分についての対策として利用が検討できる制度として、弁護士は、「遺留分特例」を用いて「株式については遺留分請求をしない合意」をとりつけたり、遺言書作成をサポートして弁護士自ら遺言執行者となったり、生前贈与についてのアドバイスを行ったりして、遺産相続トラブルを最小限に食い止めます。

(4)金融機関との交渉

事業承継を行うとき、現在の経営者が会社借入を個人保証しているケースがあります。その場合、金融機関は後継者にも個人保証の引継ぎを求める可能性があります。
中小企業において金融機関から融資などを受けようとすると、ほとんどの場合で代表者の保証を求められます。その理由として多くの中小企業の場合、財務基盤・経営基盤の脆弱性があるため、金融機関はその高くはない信用を経営者などの個人保証で補完しているということがいえます。
しかし、財務基盤・経営基盤が磐石である中小企業には当てはまるわけではなく、会社の信用を経営者の保証で補完しなくてはいけない合理的な理由がないときにまで、中小企業であるからという理由だけで、会社の借入をそのまま全額保証するような保証契約は不合理です。
オリエンタル法律事務所は金融機関との間で、承継者には個人保証をつけないように交渉します。

(5)後継者育成についてのサポート

後継者を選定した後には、社内・社外教育をして、来るべき承継に備えましょう。自社の置かれた状況により取るべき手段は異なりますが、円滑な事業承継のためには意識的な後継者の育成が不可欠です。
しかしながら、現在の経営者が毎日忙しくしながら個別に教育指導を行うことは現実的ではありません。
オリエンタル法律事務所は、研修を開いたり、個別指導を行ったりして後継者の育成を計画することもあります。

(6)M&Aに関するサポート

事業承継の手法として「M&A」を利用するケースがあります。M&Aとは、株式譲渡や事業譲渡などの方法で会社を売却し、別会社に事業を引き継いでもらう方法です。
オリエンタル法律事務所では、法務デューデリジェンスを行ったり、M&A仲介会社との契約内容や相手企業との契約内容などについてアドバイスを行います。

(7)民事信託(事業承継信託)の活用

民事信託(事業承継信託)とは、事業承継を円滑に行うために自社株を信託することです。

そもそも信託とは、委託者が信託契約を行って財産を信頼する委託者に託し、自分の決めた目的に沿って運用・管理してもらうことをさします。

事業承継を信託するときに、信託されるのは会社の株式です。金融機関では、自社株信託という名前でサービスをしていることもあります。

事業承継信託とは、現在の経営者が金融機関に対して会社の株式を信託し、ある条件に従って後継者へ株式を受け渡すことです。現在の経営者の生前は、現在の経営者に「指図権」を残します。指図権を残すことにより、議決権行使の具体的な指示権は現在の経営者に残るので、現在の経営者は会社経営への関与を続けることが可能となります。
株式を一定以上保有すると経営権が発生するため、受け取った後継者に経営権を確実に譲ることができます。

民事信託契約の設定は非常に複雑です。オリエンタル法律事務所は、複雑な契約について誤りがなく、経営者の意図どおりの事業承継ができるように、適切な契約内容の策定や確認を行うことになります。

5 相続における株式承継

株式会社においては、多くの株を保有する株主が様々な決定権を持つことになります。
株式会社のオーナーは「株主」であり、会社の株式を保有することによって会社の経営を支配しています。
つまり、オーナーが死亡して相続が発生した場合、後継者はオーナーが所有している会社の株式を相続することになります。

(1)株式承継の流れ

まず、後継者がオーナーから会社の株式を相続した場合、会社に対して株主名簿の記載変更(名義変更)を請求します(会社法133条1項)。
株主名簿に記載されている名義の変更を行わなければ、会社その他の第三者に対して株式の相続を対抗することができないため、名義変更は必須となります。

オーナーが取締役を兼ねている株式会社において、オーナーが死亡した場合、取締役が欠けた状態となります。この場合、新たな取締役を選任する必要があります。

取締役の選任は株主総会において行われるため、臨時株主総会が開催されることになります。
臨時株主総会において、出席株主の議決権の過半数の賛成が得られれば、新取締役が選任されます。
ここで、後継者は相続により会社株式の過半数(多くの場合は全部)を引き継いでいるため、株主総会で議決権を行使することにより、自分を取締役として選任することが可能です。

(2)株式承継の注意点

① 自社株をできるだけ後継者に集中させる

後継者が経営権を掌握し、経営基盤を確立するためには、株式の議決権を後継者に集約することが重要です。
先代の死後に相続により議決権が後継者以外の親族に分散されてしまうと、後継者が自由な経営を行うことができず、立場が不安定になります。

そこで、売買あるいは贈与、遺言などの方法により後継者に自社株を承継させることが必要です。ただし、このうち遺言による承継については、後述する遺留分との関係が問題になりやすく、できれば売買あるいは贈与による承継が望ましいです。

② 後継者以外の相続人には議決権のない株式を分配する

会社法を活用して後継者以外の相続人が相続する自社株の議決権を制限することが可能です。

典型的には、先代の自社株を「議決権のある株式」と「議決権のない株式」にわけ、後継者以外の相続人には「議決権のない株式」を分配する方法があります。

後継者以外の相続人が自社株をもつことになってもそれが議決権のない株式であれば、後継者による経営に大きな支障は生じません。

この「議決権のない株式」を活用するためには、通常は会社の定款変更のための株主総会が必要になります。株主総会の手続きに誤りがあると、あとで大きなトラブルに発展しますので、弁護士に依頼して確実に株主総会と定款変更の手続きを行うことをおすすめします。

③ 後継者以外が相続した自社株を会社が買い取れるようにしておく

後継者以外の相続人から強制的に買い取れるようにするためには、通常、会社の定款変更のための株主総会が必要になります。
株主総会の手続きに誤りがあると、あとで大きなトラブルに発展しますので、弁護士に依頼して確実に株主総会と定款変更の手続きを行うことをおすすめします。

(3)株式の相続税評価とトラブル予防

事業が順調に行っている会社であればあるほど、会社株式の評価額は高額になります。
そのため、後継者がオーナーから会社株式を相続する場合、相続税の課税が問題となるケースが多いといえます。

株式価値の評価方法は、上場株式か非上場株式かによって異なります。

① 上場株式の場合

上場株式および上場されている投資信託(ETF等)の評価は、相続開始の日の最終価格(終値)など、下記の4つの価格のうち、最も低い価額により評価します。

  • 相続開始日の最終価格
  • 相続開始日が属する月の毎日の最終価格の平均
  • 相続開始日が属する月の前月の毎日の最終価格の平均
  • 相続開始日が属する月の前々月の毎日の最終価格の平均

②非上場株式の場合

非上場株式には市場における取引価格が存在しないので、市場価格を参照して株式価値を算定する方法は使えません。
非上場株式の相続税における評価方式は、大きく分けて3つの方法があります。

  • 類似業種比準方式
    主に大企業の非上場株式に用いられる評価方式です。その企業が営む業務に類似した企業(同業他社)の株価をもとにして、評価する会社の1株当たりの配当金額、利益金額、純資産価額(簿価)の3つで比準して評価する方法になります。
  • 純資産価額方式
    主に小企業の非上場株式を評価する際に用いられる方式です。その会社の総資産や負債額を原則として相続税の評価にする方法で、具体的には評価された総資産の価額から、負債や評価差額に対する法人税額に相当する金額を引いた差額によって評価します。
  • 配当還元方式
    上記2種類は「原則的評価方式」となり、非上場株式を取得したのが同族株主等だった場合に限られます。 一方、この配当還元方式は、それ以外の株主が非上場株式を評価する際に使われます。非上場株式を発行した会社から受け取る株主配当金の金額に基づいて、1株当たりの評価額を計算する評価方式になります。

また、相続によって会社株式を移転させることによって生じるトラブルを未然に防ぐため、生前贈与や遺言書の作成によって事前に事業承継の手はずを整えておくことも考えられます。

オーナーが後継者を定めないままに死亡してしまうと、相続人間で誰が会社株式を承継するかについて争いになったり、会社株式が分散してしまって会社としての意思決定をスムーズに行うことができなくなったりしてしまうおそれがあります。

こうした事態を防ぐためには、オーナー自身が生前贈与や遺言書を活用して、後継者を決めてしまいましょう。
特に生前贈与による事業承継を行う場合には、後継者としても十分な準備を行った上で会社の事業を承継することが可能になります。

ただし、相続開始前3年以内に行われた相続人への生前贈与は、相続税の計算上、相続財産に組み戻されてしまうので注意が必要です(相続税法19条1項)。 また、株式の相続であっても遺留分等は問題になりますので、遺留分侵害にも十分注意しましょう。

6 最後に

株式の贈与、相続、遺留分対策、労務管理や契約関係の整備など、法務対策は弁護士に依頼するのが最善です。オリエンタル法律事務所には弁護士だけではなく税理士や司法書士とも連携を取っており、税金関係は税理士、商業登記関係は司法書士に任せることができ、シームレスでの対応が可能です。
適切なタイミングで事業承継のご相談をいただくことで、意図しない形で廃業になったり、ご尽力をされ育った優良な事業が今後も発展を続けさせることが可能になります。

事業承継についてご検討される際には、気軽にオリエンタル法律事務所にご相談ください。

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