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遺言無効確認訴訟の裁判例まとめ|無効になるケースと判断基準を解説

遺言無効確認訴訟の裁判例まとめ|遺言が無効になるケースと判断ポイント

遺言無効確認訴訟の裁判例をもとに、遺言能力、認知症、方式違反、自筆証書遺言、公正証書遺言の口授など、遺言が無効と判断されるポイントを弁護士相談前にわかりやすく解説します。

遺言無効確認訴訟とは

遺言無効確認訴訟とは、亡くなった方が残した遺言について、「その遺言は法律上無効である」と裁判所に確認してもらう訴訟です。

遺言は、被相続人の最終意思として尊重されます。しかし、遺言者に判断能力がなかった場合や、法律で定められた方式を満たしていない場合には、遺言が無効となることがあります。民法上も、遺言は法律に定める方式に従わなければならないとされ、自筆証書遺言や公正証書遺言にはそれぞれ厳格な要件があります。

遺言無効確認訴訟でよく争われるのは、主に次のような点です。

争点 よくある主張
遺言能力 認知症・せん妄・精神疾患などで内容を理解できなかった
自書・押印・日付 自筆証書遺言の方式に不備がある
偽造・変造 本人が書いたものではない
公正証書遺言の口授 遺言者本人が公証人に意思を伝えていない
内容の不自然さ 特定の相続人・第三者に全財産を渡すなど不合理な内容

遺言無効確認訴訟はそもそも認められるのか

最高裁昭和47年2月15日判決は、遺言無効確認の訴えについて、形式上は過去の法律行為の確認を求めるものでも、現在の法律関係に関する紛争解決として確認の利益がある場合には認められるとした重要判例です。

また、最高裁昭和56年9月11日判決では、遺言無効確認訴訟における確認の利益について、原則として、原告の相続分が生前贈与などによってなくなるかどうかを考慮すべきではないと判断されています。さらに、同一証書に二人の遺言が記載されている場合、共同遺言として問題になることも示されています。

つまり、遺言の有効・無効によって相続人の権利関係に影響がある場合、遺言無効確認訴訟は実務上重要な手段になります。

裁判例1|遺言能力が争われたケース

遺言無効確認訴訟で最も多い争点の一つが「遺言能力」です。

遺言能力とは、簡単にいうと、遺言の内容とその結果を理解する判断能力のことです。裁判例では、遺言能力について「遺言事項を具体的に決定し、その法律効果を弁識するのに必要な判断能力」と整理されることがあります。MUFG相続研究所のレポートでも、令和3年から令和4年にかけての遺言無効確認請求裁判例19件のうち、遺言能力の有無が争点となったものが15件と最も多いと分析されています。

ただし、認知症の診断があるからといって、直ちに遺言が無効になるわけではありません。裁判所は、診断名や長谷川式認知症スケールの点数だけでなく、遺言内容の複雑さ、財産の内容、相続人との関係、遺言作成の経緯、作成時の会話状況などを総合的に判断します。医学的判断は重要な基礎資料ですが、最終的な遺言能力の有無は法的判断です。

実務上のポイント

遺言能力を争う側は、診断書、介護記録、入院記録、認知症検査の結果、日記、メール、遺言作成前後の言動などを集める必要があります。反対に、遺言の有効性を主張する側は、遺言作成時に内容を理解していたことを示す資料が重要になります。

裁判例2|自筆証書遺言の日付が違っていたケース

最高裁令和3年1月18日判決は、自筆証書遺言の日付に関する重要な裁判例です。

この事案では、遺言者が平成27年4月13日に遺言の全文・日付・氏名を自書し、その後、平成27年5月10日に押印しました。つまり、遺言書に書かれた日付と、押印によって遺言が完成した日が異なっていました。原審は遺言を無効としましたが、最高裁は、必要以上に方式を厳格に解すると遺言者の真意の実現を妨げるおそれがあるとして、日付が真実の成立日と異なるからといって直ちに無効とはいえないと判断しました。

この裁判例からわかるのは、自筆証書遺言の方式違反が問題になっても、形式的なミスだけで即無効になるとは限らないということです。もっとも、日付の記載は遺言能力の有無や複数の遺言の前後関係を判断するうえで重要なため、正確に記載するべきです。

裁判例3|花押は押印と認められず無効とされたケース

自筆証書遺言では、原則として全文、日付、氏名を自書し、押印する必要があります。

最高裁平成28年6月3日判決では、自筆証書遺言の末尾に「花押」が書かれていたケースで、花押が民法968条1項の「押印」にあたるかが争われました。最高裁は、花押を書くことは印章による押印とは異なり、我が国において花押を印章による押印の代わりに用いて文書を完成させる慣行があるとは認め難いとして、花押は押印の要件を満たさないと判断しました。

この裁判例は、自筆証書遺言の方式違反による遺言無効確認訴訟でよく引用されます。サインや花押のように本人らしい印があっても、法律上の押印と評価されない場合があるため注意が必要です。

裁判例4|公正証書遺言でも「口授」がなければ無効になり得る

公正証書遺言は、公証人が関与するため、自筆証書遺言よりも無効になりにくいといわれます。しかし、公正証書遺言でも絶対に有効とは限りません。

公正証書遺言では、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授することが必要です。最高裁の裁判例では、遺言者が公証人の質問に対して言葉で陳述せず、単に肯定・否定の挙動を示しただけでは、民法969条2号の口授があったとはいえないと判断されています。

また、別の最高裁判例でも、立会証人が遺言内容の筆記が終わった段階から立ち会い、その後、公証人が読み聞かせた内容に遺言者がただうなずいただけであった事案について、口授があったとはいえず、公正証書遺言を無効とした原審判断が是認されています。

公正証書遺言でも争われる典型例

公正証書遺言が無効と主張されるケースでは、次のような事情が問題になります。

事情 無効主張につながる理由
遺言者がほとんど話していない 口授がないと評価される可能性
公証人の質問に「はい」と答えただけ 本人の具体的意思が確認できない可能性
周囲の人が主導していた 本人の意思ではない疑い
遺言内容が複雑 高度な理解能力が必要
認知症・せん妄があった 遺言能力が争われやすい

遺言無効確認訴訟の裁判例から見える判断ポイント

裁判例を整理すると、遺言無効確認訴訟では次のポイントが重視されます。

1. 遺言作成時の判断能力

認知症の有無だけでなく、遺言内容を理解できたか、誰に何を相続させるのかを認識できていたかが重要です。

2. 遺言内容の複雑さ

「全財産を長男に相続させる」という単純な内容と、多数の不動産・預貯金・株式を複数人に細かく分ける内容では、必要とされる理解力が異なります。

3. 遺言作成の経緯

誰が遺言作成を提案したのか、専門家との打ち合わせはあったのか、遺言者本人が主体的に内容を決めたのかが見られます。

4. 方式違反の有無

自筆証書遺言では、自書、日付、署名、押印が問題になります。公正証書遺言では、証人の立会い、口授、読み聞かせ、署名押印などが問題になります。

5. 内容の合理性

長年交流のない人物に全財産を渡す、介護していた相続人を完全に排除するなど、内容が不自然な場合には、遺言能力や不当な関与の有無が争われやすくなります。

遺言を無効にしたい場合に集めるべき証拠

遺言無効確認訴訟では、感情的に「納得できない」と主張するだけでは足りません。裁判所に対して、遺言が無効であることを裏付ける証拠を提出する必要があります。

特に重要なのは、次のような資料です。

証拠 内容
診断書・カルテ 認知症、せん妄、精神疾患などの有無
介護記録 日常生活での判断能力、会話能力
認知症検査結果 HDS-R、MMSEなど
遺言作成前後のメール・手紙 本人の意思や理解状況
公証人とのやり取り 公正証書遺言の作成経緯
関係者の証言 誰が遺言作成を主導したか
過去の遺言書 内容の変遷や不自然な変更の有無

まとめ|遺言無効確認訴訟は裁判例の分析が重要

遺言無効確認訴訟では、単に「不公平な遺言だから無効」と判断されるわけではありません。裁判所は、遺言能力、方式違反、作成経緯、遺言内容、医学的資料、関係者の関与などを総合的に判断します。

特に裁判例からは、次のことがわかります。

  • 認知症だからといって直ちに遺言が無効になるわけではない
  • 自筆証書遺言では、日付・押印・自書などの方式が重要
  • 花押は押印とは認められない
  • 公正証書遺言でも、口授がなければ無効になり得る
  • 形式的なミスでも、直ちに無効にならない場合がある
  • 遺言無効確認訴訟では、証拠の集め方が結果を大きく左右する

遺言の有効性に疑問がある場合や、相続人間で遺言の効力について争いがある場合は、早めに相続分野に詳しい専門家へ相談することが大切です。

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