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無限連鎖講と連鎖販売(ネットワークビジネス)

 

無限連鎖講とは、いわゆるネズミ講のことです。無限連鎖講は、終局において破綻すべき性質のものであるにかかわらずいたずらに関係者の射倖心を煽り、加入者の相当部分の者に経済的な損失を与えるとして全面的に禁止されています。

 

ネズミ講にあたる利殖組織はすでに戦前前から存在していたようですが、昭和47年から昭和58年頃にかけて「天下一家の会」が主催するネズミ講の被害が全国的に多発したことから、昭和53年11月、無限連鎖講の防止に関する法律に制定され、翌年5月11日施行されました。

 

その後、昭和63年5月に法律上の無限連鎖講の定義を改める法改正がなされ、金銭を用いた組織だけなく、有価証券などの物品を用いた組織についても広く規制の対象とされました。

 

1 無限連鎖講の類型

無限連鎖講には会員主導型、役務(便益)主導型があります。会員主導型の一例を示すと、Aは本部に入会金として5万円、指定された先順位会員(1番会員から6番会員)に2万円を送金すると順位8番にランクされます。Aが子会員2名を勧誘し入会させると順位7番に進み、その2名の子会員がそれぞれ2名の新会員を入会させると順位6番に進み、以下同様に新しい代の会員の加入に連れてAは先順位に進むことになります。

 

2 無限連鎖講の規制内容

この法律において規制される無限連鎖講は、次のように定義されるものです。

①加入者が無限に増加することを前提としていること

②加入者が金品を出捐すること

③加入者が先順位者から順次後順位者に連鎖して段階的に2倍以上の倍率で増加する組織であること

④先順位者が後順位者の出捐する金品から自己の出捐した金品の価額または数量を上回る価額または数量の金品を受領する仕組みになっていること

⑤金品配当組織であること 

 

3 無限連鎖講の規制内容

無限連鎖講を開設すること、運営すること、講に加入すること、加入を誘惑すること、さらにこれらの行為を助長する行為が禁止されています。

単なる金銭配当組織である限り、ねずみ講は、利益を上げるほんの少数の者と損失を被る多数の被害者が生じます。公序良俗に反する違法な取引として、法律によって禁止されています。

 

4 無限連鎖講の違法性

無限連鎖講の組織では、会員は後順位の会員がねずみ算式に増加することによってのみ自己の出資金を回収し配当を受けることができます。

しかし、会員となる者には限度があることから、この組織は必然的に行き詰まり破綻します。そして、出資しただけしたが配当金が支払われないで終わってしまう多数の会員を生み出すことになります。

一方、ネズミ講の元締めは損失を被ることなく多数の会員の入会金を受け取って莫大な利益をあげることができます。

このことに無限連鎖講の違法があるといえます。

無限連鎖講防止法の成立によって天下一家の会をはじめとする当時のねずみ講の組織は崩壊しました。しかし、同様の組織もその後も現れ、商品の販売を仮装したねずみ講も出現して、同法適用の限界が問題とされるようになりました。

最高裁が同法の適用について初の判断を下したESプログラム事件もこれに属します。最高裁は、ESプログラムは、人工宝石の販売に名を借りた金銭の配当組織であり、無限連鎖講防止法の第2条の要件を充たす金銭配当組織であると認定しました。

 

5 連鎖販売取引(マルチ取引)

ねずみ講と類似した組織に連鎖販売取引(マルチ取引)の組織があります。

これは商品流通の形式をとってはいますが、これに加入した会員は商品販売による利益を得るものの、これをしのぐ利益を新規加入者の募集と下位レベルの者を上位レベルに昇進させること(これらをまとめて「リクルート」といいます。)によって利益を得ることができるシステムです。

無限連鎖講と同様にシステムに内在するリクルートの有限性のために必然的に行き詰まる制度であり、その際に多数の会員に経済的その他の損害を与え、また勧誘にあたって欺罔的手段が用いられる等、ねずみ講とその反社会的性において共通する点が多いといえます。

連鎖販売取引(マルチ取引)は、昭和51年に制定された訪問販売法として規制されました。

そして、現在、特定商品取引法は、このマルチ取引を「連鎖販売取引」として規制し、その勧誘にあたっては重要事項の不告知や不実記載等を処罰しています。

連鎖販売取引(マルチ取引)と無限連鎖講とはその反社会性において共通しますが、前者が物品販売組織として商品組織に伴う中間マージンの取得という要素をいくらか含んでいるのに対して、金銭配当組織である後者はこのような要素が全くないため、前者は実質禁止による行為規制、後者は全面禁止されているという点で異なっています。

 

6 無限連鎖講との区別

そこで、商品販売を仮装にしたに過ぎないと思われるリクルート組織が出現すると、両者を区別することが重要となってきます。

裁判例、判例、オリエンタル法律事務所の実例を踏まえながら、無限連鎖講と連鎖販売取引(マルチ取引)の区別として、次の基準が要素になってくると判断しています。

①商品の仕入価格と販売価格との間に極端な差異があり(10倍前後)、入会金として支払われる額が商品の価値と比べて極端に大きいこと

②組織の運営者が商品の販売自体にほとんど努力せず、もっぱら会員の勧誘に重点を置いていること

③会員も商品の販売による利益は期待せず、もっぱら新会員のリクルートにより配当を受けることに務めていること

 

7 連鎖販売取引に対する規制

(1)氏名などの明示(法第33条の2)

統括者(連鎖販売業を実質的に掌握している者)、勧誘者(統括者が勧誘を行わせる者)または一般連鎖販売業者(統括者または勧誘者以外の連鎖販売業を行う者)は、連鎖販売取引を行うときには、勧誘に先立って、消費者に対して、次のような事項を告げなければなりません。

 

・統括者、勧誘者または一般連鎖販売業者の氏名(名称)(勧誘者、一般連鎖販売業者にあっては統括者の氏名(名称)を含む)

・特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨

・その勧誘にかかわる商品または役務の種類

 

(2)禁止行為(法第34条)

特定商取引法は、統括者または勧誘者が契約の締結についての勧誘を行う際、取引の相手方に契約を解除させないようにするために嘘をつくことや威迫して困惑させるなどの不当な行為を禁止しております。具体的には以下のようなことが禁じられています。

 

・勧誘の際、または契約の締結後、その解除を妨げるために、商品の品質・性能など、特定利益、特定負担、契約解除の条件、そのほかの重要事項について事実を告げないこと、あるいは事実と違うことを告げること。

・勧誘の際、または契約の締結後、その解除を妨げるために、相手方を威迫して困惑させること。

・勧誘目的を告げない誘引方法(いわゆるキャッチセールスやアポイントメントセールスと同様の方法)によって誘った消費者に対して、公衆の出入りする場所以外の場所で、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘を行うこと。

 

(3)広告の表示(法第35条)

統括者、勧誘者、一般連鎖販売業者は、その統括者の統括する一連の連鎖販売業にかかわる連鎖販売取引について広告する場合には、その連鎖販売に関して、以下のような事項を表示することが義務づけられています。

 

・商品(役務)の種類

・取引に伴う特定負担に関する事項

・特定利益について広告をするときにはその計算方法

・統括者などの氏名(名称)、住所、電話番号

・統括者などが法人で、電子情報処理組織を使用する方法によって広告をする場合には、当・該統括者などの代表者または連鎖販売業に関する業務の責任者の氏名

・商品名

・電子メールによる商業広告を送る場合には、統括者などの電子メールアドレス

 

(4)誇大広告などの禁止(法第36条)

特定商取引法は、誇大広告や著しく事実と相違する内容の広告による消費者トラブルを未然に防止するため、表示事項などについて、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものより著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止しています。

 

(5)未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止(法第36条の3)

消費者があらかじめ承諾しない限り、統括者、勧誘者または一般連鎖販売業者は連鎖販売取引電子メール広告を送信することを、原則禁止しています。(オプトイン規制)

この規制は、連鎖販売事業者のみならず、連鎖販売取引電子メール広告受託事業者も対象となります。したがって、当該電子メール広告の提供について、消費者から承諾や請求を受けた場合は、最後に電子メール広告を送信した日から3年間、その承諾や請求があった記録を保存することが必要です。以下のような場合は、規制の対象外となります。

 

・「契約の成立」「注文確認」「発送通知」などに付随した広告

・契約内容や契約履行に関する通知など「重要な事項」を通知するメールの一部に広告が含まれる場合

・メルマガに付随した広告

・消費者からの請求や承諾を得て送信する電子メール広告の一部に広告を記載する場合

・フリーメール等に付随した広告

・インターネット上で、無料でメールアドレスを取得できるサービスで、無料の条件として、利用者がそのアドレスからメールを送ると、当該メールに広告が記載されるものなどの一部に広告を記載する場合。

 

(6)書面の交付(法第37条)

特定商取引法は、連鎖販売業を行う者が連鎖販売取引について契約する場合、それぞれ以下の書面を消費者に渡さなければならないと定めています。

①契約の締結前には、当該連鎖販売業の概要を記載した書面(概要書面) を渡さなくてはなりません。「概要書面」には、以下の事項を記載することが定められています。

・統括者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名

・連鎖販売業を行う者が統括者でない場合には、当該連鎖販売業を行う者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名

・商品の種類、性能、品質に関する重要な事項(権利、役務の種類およびこれらの内容に関する重要な事項)

・商品名

・商品の販売価格、引渡時期および方法そのほかの販売条件に関する重要な事項(権利の販売条件、役務の提供条件に関する重要な事項)

・特定利益に関する事項

・特定負担の内容

・契約の解除の条件そのほかの契約に関する重要な事項

・割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項

・法第34条に規定する禁止行為に関する事項

 

②契約の締結後には、遅滞なく、契約内容について明らかにした書面(契約書面)を渡さなくてはなりません。「契約書面」には、以下の事項を記載することが定められています。

・商品の種類、性能、品質に関する事項(権利、役務の種類およびこれらの内容に関する事項)

・商品の再販売、受託販売、販売のあっせん(同種役務の提供、役務の提供のあっせん)についての条件に関する事項

・特定負担に関する事項

・連鎖販売契約の解除に関する事項

・統括者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名

・連鎖販売業を行う者が統括者でない場合には、当該連鎖販売業を行う者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名

・契約年月日

・商標、商号そのほか特定の表示に関する事項

・特定利益に関する事項

・特定負担以外の義務についての定めがあるときには、その内容

・割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項

・法第34条に規定する禁止行為に関する事項

 

そのほか消費者に対する注意事項として、書面をよく読むべきことを、赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。また、契約書面におけるクーリング・オフの事項についても赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。さらに、書面の字の大きさは8ポイント(官報の字の大きさ)以上であることが必要です。

 

(7)行政処分・罰則

上記行政規制に違反した者は、業務改善指示(法第38条)や業務停止命令(法第39条)、業務禁止命令(法第39条の2)などの行政処分のほか、罰則の対象となります。

  

8 最後に

オリエンタル法律事務所では、近年、ネットワークビジネス企業の業務停止処分を非常に多く見受けられます。重要なことは、特定商取引法をシリ、企業側及び会員双方での適切な対応が極めて重要です。

まずは、ネットワークビジネス企業として、コンプライアンス体制作りをすることをお勧めいたします。

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