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建物明渡の強制執行

最近、賃料を滞納する人が多いので、利回りを上げるという視点から、債務不履行に基づく解除から明渡に至るまでをどのように敢行すべきかを検証してみます。

明渡について賃借人と交渉しても、「少し待ってください、来月には必ず出ていきます。」などという説明を繰り返されているうちに、居座られてしまうということはよくある話です。

そこで、このような場合には、任意の交渉に頼らず、粛々と訴訟を行い、強制執行を目指すべきです。具体的な流れとしては、次のようになります。

支払の催告 貸主またはその代理人が「内容証明郵便」等で催告する。
契約解除の通知 貸主またはその代理人が「内容証明郵便」等で解除の意思表示をする。なお、この場合、上記の支払の催告とともに○月○日までに支払いがされない場合は当然に解除となるという「条件付解除」の方法をとるのが普通である。
建物の明渡しと未払賃料等の支払を求める訴えの提起 訴えの提起は、通常は代理人である弁護士が、被告の住所地か物件の所在地を管轄する地方裁判所に訴状を提出して行うが(民事訴訟法第4条、第5条、第8条、第133条)、本件のような訴訟の場合は、建物の明渡しが主たる請求の目的となるため、その訴額(注)(建物の固定資産税評価額の2分の1相当額)が140万円以下の場合(賃貸の目的物が建物の1室というような場合は、全体の床面積に対する当該目的物の床面積の割合で計算する。)には、簡易裁判所に訴えを提起することができ(裁判所法第33条第1項第1号)、司法書士がその手続を代理して行うこともできる(司法書士法第3条第1項第6号)。
判決(確定判決)=「債務名義」の取得 (注) 具体的な訴額の算定基準は、最高裁民事局長通知「訴訟物の価格の算定について」(昭和31年12月12日民甲第412号、昭和39年6月18日民ニ第389号)に定められている。
明渡しの強制執行の申立(判決正本に「執行文」(注)を付与してもらい、申立てる(民事執行法第25条)。 「債務名義」には、確定判決以外に、仮執行の宣言(注)を付した判決、確定判決と同一の効力を有する和解調書などがあるが(民事執行法第22条、民事訴訟法第267条)、本件のような裁判における判決の場合には、通常その判決が確定しなければ、次の段階の明渡しの強制執行の手続には入れないとされている。(注)
(注) 通常の裁判においては、判決の中で、仮執行の宣言を付した判決が得られれば、その判決の確定を待たずに強制執行の申立ができるのであるが、建物の明渡しのような強制執行については、上訴審で覆えされたときに原状回復が難しいという面もあることから、通常は仮執行宣言は付されない。しかし、本質的に付されないというものではなく、建物の明渡し請求に付された例として、京都地判昭和61年2月4日判時1199号131頁がある。
強制執行 執行官が一定の期限(1か月)を定め、明渡しの催告を行い、その期限までに明渡しがなされない場合は、執行官が実力で占有者を排除する。もしその間に、債務者以外の者に占有が移転しても、執行官はその者に対し、強制執行をなすことができる(民事執行法第168条の2第1項、第2項、第6項)。
(注) 「執行文」は、その事件の記録を保管する裁判所の書記官が付与する(民事執行法第26条)。

まずは、賃料不払いを理由に賃貸借契約を解除しておきます。解除の通知としては、通常、1週間程度の期限を定めて未払賃料の支払を促し、同期限までに支払がなかった場合は解除するという内容のものを送付します。同期限までに未払賃料の支払がなければ、すみやかに訴訟を提起します。

建物明渡請求訴訟で勝訴判決を得て、当該判決が確定したら、いよいよ強制執行です。
 明渡となれば、賃借人本人やその同居人に立ち退いてもらうだけでなく、対象物件内の家具その他の動産も全て搬出してもらわなければなりません。強制執行は、①申立、②執行官との打合せ、③明渡の催告、④明渡の断行と進んでいきます。

1 強制執行の申立

建物の所在地を管轄する裁判所の執行官に対して行います。申立書には、判決正本等と併せて、建物の所在地の地図等を添付します。

2 執行官打合せ

明け渡しの催告期日、断行日の日程調整、動産執行を同時に行う場合には、動産の運搬の方法、動産の保管場所等の打ち合わせをします。
明け渡しの強制執行においては、実際に荷物を搬出・保管する業者を執行補助者として利用することになりますが、通常は、オーナー様側で利用する執行補助者をあらかじめ決めておきます。ただし、利用する執行補助者が決まっていない場合には、執行官が執行補助者を紹介してくれます。

3 明渡の催告期日

 執行官は、賃借人に対して、建物明け渡しの強制執行の申し立てがなされてから原則2週間以内に、明渡執行の催告をします。具体的には、催告から1か月後の日を引渡期限とし、それまでに自主的に退去するよう告知します。引渡し期限は、明渡催告の日から1か月を経過する日としなければなりません。したがって、申立から引渡し期限までは、約1か月半を要することとなります。

4 明渡断行の期日

執行官、執行補助者らとともに、賃貸住宅所在地に赴き、建物内から家具等の動産の搬出を行ったり、鍵を付け替えたりし、賃借人を退去させます。退去の際、妨害等が予想される場合には、あらかじめ警備会社や警察に連絡し、同行してもらうことになります。
このとき執行補助者にかかる費用は、搬出する動産の数等により異なりますが、1LDKなら30万円程度がひとつの目安です。荷物が全て運び出されたら、鍵を交換して、明渡完了です。なお、運び出された荷物は、一定期間内に賃借人が引き取りに来ない場合、執行官により売却又は廃棄されることになります。

以上のような手続を進めていくなかで、賃借人が任意に退去することも期待できます。特に、明渡の催告期日は、実際に執行官が執行補助者等を連れて対象物件を訪問し、賃借人が拒んでも強制的に開錠して対象物件内に立ち入って催告を行う点で、賃借人へのプレッシャーは相当なものとなります。一般的には、この明渡の催告から明渡の断行日までの間に、賃借人が任意退去に至るケースが多いと言えます。

以上のように、明渡の強制執行手続を行うには、時間と相当の費用がかかります。そして、賃料を滞納するような賃借人については、資力がなく、このような強制執行費用はおろか、滞納分の賃料さえ回収が十分にできないこともままあります。そこで、賃料収入が得られないまま物件を占拠される期間は、少しでも短くなるように対応することが肝要です。訴訟を提起し、強制執行を行うというはっきりした姿勢を早期に見せることによって、賃借人にこちらの本気を認識させ、自主的に明渡しをしてもらえると、被害は最小限に食い止められるでしょう。場合によっては、滞納賃料を免除してでも早期に明け渡しをしてもらう交渉をするべきです。その方が結果的に安定した利回りの確保に繋げることができるでしょう。

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