文字サイズ

お知らせnews

お墓(墓地埋葬法)

 昨今、お墓、墓地、檀家檀徒をめぐるトラブルが増加しています。これまではお墓の永代使用の継続を求める相談・事例が多い傾向でしたが、近年は、お墓の撤去、お寺からの遺骨の移転、改葬、永代使用関係解消、檀家檀徒関係の円満解消についての相談が多いように思います。

また、これまでと同様、お布施、永代使用料、供養料、墓地管理料といった金銭的な紛争は引続き多くご相談をいただくように思います。お墓、墓地、檀家檀徒は、先祖代々にわたって付き合いがあるだけに、当事者間で話し合いが紛糾するケースも珍しくありません。

 オリエンタル事務所では、お墓、墓地、檀家檀徒、お墓の撤去、お寺からの遺骨の移転、改葬、墓地利用権(永代使用権)解消、檀家檀徒関係の円満解消について、解決実績がありますので、それらを踏まえてお墓まわりの法律について解説したいと思います。

 

1 お墓とは

 お墓に関しては、墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)という法律があります。

 墓地埋葬法では、墓地、埋葬等に関する法律においては、埋葬や火葬は、原則として、死亡から24時間経過後でなければしてはならず、埋葬等は墓地で、火葬は火葬場でしなければならないとされ、埋葬や火葬をしようとする場合には、市区町村長の許可が必要であるなど様々な定めが設けられています。

 そして、今回のお題であるお墓については、墓地にしか作ってはいけないと定めています。つまり、たとえ自分の土地であっても、自宅の庭や裏山にお墓を作ることはできません。仮に、墓地でないところに墓石を建ててその地下に遺骨を埋めてしまうと、墓埋法違反になります。そのような行為には、「1000円以下の罰金又は拘留若しくは科料」という罰則も定められています(墓埋法21条)。

 墓地というのは、お墓が集まっている区域のことです。「◯◯霊園」とか、「◯◯墓地」などをイメージしていただけばよいと思います。

 墓地の経営には、都道府県知事の許可が必要です。現在は、公益法人や宗教法人でなければ墓地の経営を許可しない運用になっています。個人や会社では、墓地を作ることはできません。

 2 祭祀承継者

 お墓を相続するのは祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)と呼ばれる人です。祭祀承継者は、その一族の代々の先祖をまつったり法要を行ったりなどの祭祀を引き継ぎます。

 祭祀に必要なお墓や仏壇仏具その他の祭具、家系図や先祖代々の系譜なども引き継いで管理します。

 

では、祭祀承継者は、どのように決まるのか解説していきます。祭祀財産は、一般の預貯金や不動産などの相続財産とは異なる扱いになります。祭祀承継者は、遺産分割協議によって決めることはありません。

 祭祀財産を遺産と同じように相続人の間で分割してしまうと、祖先のお祭りのために使用することが困難となり、祭祀財産としての性質が損なわれてしまうからです。

 

 そして、祭祀財産の承継者は、優先順位が民法で定められています。祭祀承継者の決定方法は、次のとおりです。

 ・第1位 被相続人の生前の指定か、遺言で指定されたもの

 ・第2位 被相続人の指定がないときは、その地方の慣習

 ・第3位 慣習も明らかでなく承継者が決まらないときは家庭裁判所の調停か審判

 3 墓地使用権(永代使用権)とは

 土地の一区画である墓地を使用する権利です。墓地の使用権は、将来にわたってその土地にお墓を建てて使用できる権利と言えます。

 この墓地使用権は永代使用権と呼ばれることもあります。墓地使用権と永代使用権は同じ意味として問題ありません。

 墓地を購入したということは、墓地使用権(永代使用権)を取得したことを意味します。

 上記のとおり、お墓は、墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)によって、市区町村長の許可を得た墓地のみに建てられると定められています。

 

 一般的に、「墓地を購入する」というのはこの墓地使用権(永代使用権)を得ることであって、その土地の所有権を得るわけではありません。墓地使用権(永代使用権)を得た墓地の区画を勝手に売買したり、他人に譲渡したりすることはできません。

 墓地使用権(永代使用権)を得るための条件や契約内容は、それぞれの霊園や墓地にある利用規定や使用規定によって異なります。墓地使用権(永代使用権)はあくまで墓地の管理者と使用者との間に交わされる契約上のものであって、法律で定められた権利ではありません。したがって、契約書の内容は非常に重要ですので必ず内容を確認しましょう。

(1)墓地使用権(永代使用権)の取得

 墓地使用権(永代使用権)を手に入れるには、その墓地を管理しているお寺や自治体などと契約をします。そして契約にあたっては墓地使用料(永代使用料)が必要です。墓地使用料(永代使用料)は、立地条件などによってさまざまで、駅からの利便性が高いところや公共機関が充実しているところ、首都圏など地価が高いところなどは使用料が高くなるのが一般的です。

(2)墓地使用権(永代使用権)の承継

 上記のとおり、お墓を承継する際には、必ずそれぞれの霊園や墓地にある利用規定や使用規定を確認しましょう。

 祭祀財産の承継者は、法的には誰でもなることができます。しかし、お墓の場合、霊園や墓地にある利用規定や使用規定によって墓地使用権の承継に「原則として3親等まで」「原則として使用者の親族であること」などといった条件が設けられている場合もあります。

 もし、遠縁の親戚や、内縁の妻、友人といった人を祭祀承継者に選ぶ場合には、決定する前にお墓がある霊園や墓地にある利用規定や使用規定を確認するか、墓地に直接問い合わせることをおすすめします。

 また承継にあたって、墓地使用者(被相続人)の死亡を前提としている霊園もあります。生前の承継を希望する場合も、必ず事前に使用規則を確認しましょう。承継時に必要な書類なども霊園によって異なります。

 

 祭祀承継者が決まったら、まずは承継する墓地の管理者や菩提寺に連絡し、名義変更手続きをしましょう。

 墓地の承継に必要な書類の一般的な例は以下のとおりです。

  ・墓地使用権を取得した際に発行された書類(墓地使用許可証、永代使用承諾証など)

  ・承継の理由がわかる書類(墓地使用者の死亡が記載された戸籍謄本など)

  ・承継者の戸籍謄本や住民票

  ・承継者の実印と、印鑑登録証明書

 

 祭祀承継者の役割は、具体的に次の3つです。

 ①お墓の維持管理をする

 命日やお彼岸、お盆などに親族がお参りできるよう、お墓を手入れして維持に努めます。霊園であれば維持管理費、寺院墓地であればお布施など、管理にまつわる費用を支払うのも祭祀承継者の役割です。

 

 ②法要を主宰する

 一周忌や三回忌などの法要、盆や彼岸など先祖供養に関する行事を、親族を集めて主宰します。

 

 ③遺骨やお墓の所有権を持ち、その行方を決定する

 遺骨やお墓の所有権は、祭祀承継者にあります。そのため、「すでに納骨した親の遺骨を分けて、兄弟それぞれの手元に置きたい」「お墓が遠方でなかなかお参りに行けないので、墓じまいをして都内の霊園に遺骨を移したい」といった分骨や改葬を希望する場合、祭祀承継者の同意がなくては行うことができません。

 

(3)墓地使用権(永代使用権)の消滅

 永代使用権は、墓地の一区画を永代に渡って使用できる権利のことですが、場合によってはその権利が消滅することもあります。例えば、永代使用権を得るとその墓地の使用者は管理者に対し、お墓を管理・維持するための「管理費」を毎年支払う必要があります。ところが、その管理費を支払わず、督促にも応じない状況が続くと、永代使用権の契約を解除されてしまうことがあります。

 

 以下のような場合、墓地使用権(永代使用権)の取り消し、消滅になります。 

 ①管理費(寺院墓地では護寺会費・掃除料など)の滞納

 ②墓地使用権者の死亡した後に、それを継承する者が継承の申請をしない場合

 ③お寺と異なる宗派に改宗した場合

 ④墓地管理者に無断で他人に使用権を譲渡した場合

 ⑤墓地管理者に無断で墓地以外の目的に使用した場合

 ⑥決められた期限内までに墓地を使用しない場合

 ⑦墓地(霊園)の規定には、石塔(墓石)の形状を決めたものもあり、それに違反した場合

 

(4)祭祀承継の拒否

 祭祀承継者となることを拒否したり、辞退したりすることはできるのでしょうか。被相続人が亡くなり、自分が祭祀承継者になった場合には、親戚から非難されないように墓参りや法事などを行い、お寺や霊園との契約にしたがってお金を支払わなくてはなりません。

  結論から申し上げると、被相続人の指定、慣習、家庭裁判所の審判によって祭祀承継者と指名された者は、拒否も辞退もできません。

 これは、下記のとおり、祭祀承継は他の金融資産とは異なり、そもそも相続財産の対象ではないため、相続放棄を適用することができません。

 したがって、祭祀承継者として選ばれた場合には、当然に祭祀承継者となります。 

4 墓石の所有権

 墓地を購入する場合、土地は墓地の運営主体の所有物件のままで、墓地の使用権のみを取得することを指します。

 取得した墓地に墓石を建てた場合、墓石は個人の所有物件にあたります。

 他方、お墓の所有権については、お墓のある土地の所有権そのものは、寺院あるいは霊園の運営主体に帰属します。その一方で、墓地以外の墓石や遺骨については、個人の所有物となります。墓石や遺骨は、使用権者と所有者が必ず同一である必要があります。

 5 お墓と相続税

 祭祀財産であるお墓は、相続税の対象にはなりません。

 お墓を相続する場合、祭祀財産という少し特殊な区分で扱われます。お墓は、金銭的・資産的な価値として扱われるものではなく、祭祀や慣例に用意・所有されるものですので、お金と同じ財産としては扱われないのです。

 お墓を相続しても、そのお墓の土地の所有権を取得するわけではありません。あくまで永代使用権を相続するだけです。しかもお墓は、常時経済的な価値をもって取引されている純粋な「商品」とも性質が異なります。

 あくまでも先祖を敬うためのものです。そのために、「祭祀財産」という分類をされ、相続財産には含めないということになっています。

 したがって、お墓を含む祭祀財産は相続財産の対象ではありませんので、承継しても相続税を支払う必要はないのです。

金融資産や不動産をお持ちの方が、それらの財産を遺して亡くなると、場合によって相続税が発生します。たとえば5000万円の資産を持っている方の場合、場合によってその5000万円に対して相続税が課せられます。

 しかし生前に高級墓地を1000万円で購入したならば、相続税の対象は4000万円だけとなるのです。そのために、生前に新たにお墓を購入して、相続税を少なくしようと考える方がおられます。

ただし純金の仏像などを購入したり、美術品としての価値を持つような仏具を手に入れたりすると、それらは祭祀財産ではなく経済的取引上の価値を持つ資産だと、税務署が判断する可能性がありますから、ご相談いただけますと幸いです。 

6 最後に

 このように見てきたように、お墓は誰が相続するのか、お墓の管理費用は誰が負担するのか、お墓を引き継ぐ人がいない場合にどうするかなど、様々な問題があります。

 身内の方を亡くしたことによる相続という問題は、人生で一度は経験する大きな出来事です。そのような中、ご家族の方は、相続人及び財産の調査、遺産分割協議、相続税申告など、相続に関する様々な手続きをしていくことになりますので負担が大きいです。

 特に、遺産分割では、ご家族の意見がまとまらず、相続争いにまでなるケースがよくあります。遺産相続問題は、身内のトラブルであり、感情的な対立が生じやすいので、悩みや不安が大きく、解決までの心身の負担が大きくなりがちです。

 オリエンタル法律事務所では、このような遺産相続問題で悩みや不安を抱えられているお客様の負担が少しでも和らぐよう、お手伝いをさせていただきます。是非、お気軽にご相談下さい。

 

 

 

ニュース一覧

事務所概要

名称 オリエンタル法律事務所
弁護士 佐野太一朗
連絡先
TEL: 03-6450-4832
FAX: 03-6450-4833
所在地 〒106-0032
東京都港区六本木4-10-7
エルビル5階

Googlemap
アクセス 六本木駅
6番出口徒歩1分