賃貸マンションなどを長期的に経営していた場合、いずれは建物の老朽化により建て替えが必要となります。
建物老朽化を理由に、賃貸人が賃借人に対して、建物明渡を求めた場合であっても、裁判所により建物が朽廃しているとは認められずに、老朽化による無条件解約が認められないこともよくあります。
そこで、ここでは建物が老朽化している状況のリスク、老朽化を判断しうる基準について説明します。
建物の老朽化によって起こるトラブルは数多くあり、その危険性も大きなものになります。
老朽化した建物は耐久性が低いところ、地震や台風などの自然災害によって倒壊・破損するおそれがあります。家屋が倒壊した場合には、近隣住宅にも影響を及ぼすため、近隣からの損賠賠償請求を受けるリスクもあります。
災害以外にも木造の腐敗による倒壊や破損、シロアリなどの害虫・害獣の発生も懸念されます。
老朽化した空き家の場合は、犯罪の温床となるケースもあり、不審者などの不法侵入、不法投棄、放火の原因にもなります。近隣への損害があると、損害賠償負担なども避けられません。
このように老朽化によるリスクが大きいため、賃貸マンションやアパートが老朽化した場合、オーナーとしては建替えかリフォームかの選択肢を考えると思います。
老朽化の判断要素としては以下の事項が考えられます。
一般的に,建物が老朽化すると,建物の賃貸借契約を終了させやすくなります。 建物明渡を求める際の正当事由とは、「賃貸借を終了させ明渡を認めることが,社会通念に照らして妥当と認められる理由」とされています。正当事由の詳細については「正当事由」についての執筆をご覧ください。
建物の老朽化は、契約終了のための正当事由の1つの事情として考慮されます。老朽化の程度が著しいレベルに達していない場合は,立退料が必要になります。
この点、単なる老朽化では賃貸人のメンテナンスの不行き届きが指摘されることもあり、この場合には正当事由としては認められない場合もあり得ます。
また、老朽化した建物に関する耐震診断をし、強度不足となった場合であっても、建替えでなく、耐震補強で十分と判断されれば正当事由は認められなくなります。
オリエンタル法律事務所で担当した今までの事件では、耐震補強にかかる費用と建替えた場合の建築費を比較することが多いといえます。
最後に、参考までに、耐震性と正当事由に関する裁判例を確認したいと思います。
耐震性と正当事由に関する裁判例一覧表(耐震診断を行った事例)(平成 25 年以降の事件:認容 18 件、棄却 10 件)(全事件:認容 21 件、棄却 11 件)
裁判所/判決年月日 (出典) |
認容/ 棄却 |
立退料 | 建築時期/ 建物の概要 |
営業/居住 の別 |
耐震 診断 |
診断結果 | 耐震診断委託先 /診断法 |
耐震工事見積 | 判決理由及びその他の事情 並びに所見 |
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1 | 東京地判平成28年5月23日 (WL:2016WLJPCA05238004) |
認容 | 1階部分:2500万円 2階部分:250万円 |
昭和39年 鉄骨鉄筋コンクリート造、 地上9階,地下1階,塔屋1階 |
営業 (中華料理店、事務所) |
○ | Is値:Y方向0.6超,X方向 0.6未満。(6階と8階は0.25未満) X方向につき 多くのフロアは0.45以下 |
㈱日建設計 (第2次診断) |
1億9400万円 | 他の賃借人は退去。 賃料収入(約83万円/月)に比して耐震工事費が高く、 耐震補強工事を実施する経済的合理性を欠く。 |
2 | 東京地判平成28年3月23日 (WL:2016WLJPCA03238030) |
認容 | 300万円 (2年5ヵ月分の賃料の立退料) |
昭和24年7月 2階建木造 |
営業 (中華料理店) |
○ | 1階:X方向Y方向0.01、 2階:X方向0.27、Y方向0.69 「補強しても満足な耐力の確保は難しい」 |
木造耐震診断士 (精密診断) |
現状では耐震工事は 不可能との建設会社の意見 |
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3 | 東京地判平成28年3月18日 (WL:2016WLJPCA03188010) (判例時報2318号31頁) |
認容 | 3000万円 | 昭和49年 鉄筋コンクリート造、 地上9階,地下1階 |
営業 (日用雑貨の輸入・販売) |
○ | (Is 値)第2次診断:X方向 地下1F ~9Fまで、Y方向地下1F~8F まで、 Is値は0.6を下回る、最低は1Fの0.4 コンクリート圧縮強度調査 :全ての階で設計基準強度を下回り、 5F~7Fにつき低強度コンクリートと判明 |
㈱都市構造計画 (第2次診断及び第3次診断) 但しコンクリート圧縮強度調査の結果からすると 大地震時に崩壊する可能性が高く、 補強計画案は一時的な安全の保持にとどまるとの意見 |
2億4346万円 | |
4 | 東京地判平成28年1月12日 (WL:2016WLJPCA01128003) |
認容 | 1000万円 | 昭和40年 鉄筋コンクリート造 地上5階,地下2階 |
営業 (DJレストランバー) |
○ | Is値:X方向1F,Y方向 2Fにおいて0.3~0.6 未満、 その他0.6以上 |
不明 | 2億3965万円 | 越境部分の解消の工事、 エレベーターの全面改修、 その他の修繕も必要で 工事費用にはこれらの費用が含まれている。 地上8階地下2階のビルに建替え計画あり |
5 | 東京地判平成27年12月16日 (WL:2015WLJPCA12168024) |
認容 | 530万円 | 昭和41年12月12日 鉄筋コンクリート造6階建 |
営業 (事務所) |
○ | Is値:X方向1F~3F0.3以下、 4F0.306、5F0.323、6F0.930 |
スターツCAM㈱ | 3億3139万2000円 (但し賃貸人が主張する金額) |
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6 | 東京地判平成27年6月30日 (WL:2015WLJPCA06308013) |
認容 | 200万円 | 昭和9年頃木造 | 居住 (平成12年頃から) |
○ | 2階X方向 0.483、 Y方向0.508、 1階X方向0.674、 Y方向0.639 |
不明 | 不明 | 老朽化が進み、一部の壁が落ちるなど物理的損傷が見られるもの。 (「朽廃」に近い事案と思われる。) 賃貸人は取り毀し新築の賃貸マンションとする計画 |
7 | 東京地判平成27年9月17日 (WL:2015WLJPCA09178009) |
認容 | Y1 760 万円 Y2 630 万円 Y3 625 万円 Y4 555 万円 |
昭和28年頃 木造2階建連棟式の建物 |
営業(Y1・Y2・Y3飲食店、Y4居住) | ○ | 判決文にはIw値等記載がないが 「耐震性能が欠落し、補強工事は不可能」との結論 |
オリエンタルワークス㈱ 一級建築士事務所 |
判決文上は 具体的な見積をした形跡は認められない |
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8 | 東京地判平成27年7月28日 (WL:2015WLJPCA07288007) |
認容 | 1000万円 | 昭和27年頃木造 | 営業(薬局) | ○ | Iw値は判決文上明らかではない。 壁の割合が少ない建物とのこと。 |
一級建築士(目視による非破壊検査) | 同上 | ・適切な補修をすればなお相当期間効用を果たせるが、 営業を継続しながら耐震補強工事を行うのは不可能。 ・従って、耐震補強工事には賃借 人の休業補償も必要となる。 ・耐震補強工事をすれば、 月額賃 料も相当高額になるのに対し、 賃借人は工事後も従前の割安な 賃料 を維持する態度を示してい る。 |
9 | 東京地判平成26年12月19日 (WL:2014WLJPCA12198007) |
認容 | 3237万3000円 | 昭和46年3月31日 10階建、1階~6階鉄骨鉄筋コンクリート造、 7階~10階鉄骨造 (隅肉溶接によるもの) |
営業 (釣具製造販売) |
○ | Is値:7F~10F X方向0.09~0.24、 Y方向 0.12~0.25、1F~6F X方向 0.78~1.17、 Y方向 0.3~0.49 |
㈱HAL構造設計 | 2億1600万円補強工事をすると 居室や通路の確保ができなくなるなど 補強工事の現実性が乏しい。 |
借家権価格の鑑定をしている。 |
10 | 東京地判平成26年8月29日 (WL:2014WLJPCA08298006) |
認容 | 1000万円 | 昭和3年頃 2階建木造建物 |
営業 (理髪店と物置) |
○ | 総合評点 0.09Is値等は判決文に記載なし。 | 一級建築士 (簡易耐震診断) |
不明 | 大正時代の建築物で 全体的に老朽化が激しいようである。 |
11 | 東京地判平成26年5月13日 (WL:2014WLJPCA05138012) |
認容 | 240万円 | 昭和39年6月15日 木造2階建6室 |
営業 (小料理屋) |
○ | 1F、2F各方向 最少0.12、 最大0.42 |
不明 | 「改修工事に相当の費用を要する」 と述べているが金額は不明 |
被告のみ使用 |
12 | 東京地判平成25年12月11日(控訴事件) (WL:2013WLJPCA12118010) |
原判決一部変更 | 215万円 | 大正4年木造瓦葺2階建 (4区画ある) |
住居 | ○ | Iw 値:0.38 | 一級建築士 (東京都木造住宅耐震診断員) 一般診断法 |
工事の見積をした形跡は認められないが 判決文は「老朽化に対する補修や耐震性の補強を行うには 相当高額な費用を必要とすることが容易に推認される」 と述べられている |
4区画のうち控訴人(借主)のみが使用。 老朽化が激しい建物のようである(「朽廃」に近い事案のように思われる。) |
13 | 広島高裁岡山支部判決平成25年8月2日(控訴事件) (WL:2013WLJPCA08026002) |
原判決一部変更 | 500万円 | 38年経過鉄骨鉄筋コンクリート造 地上7階、地下2 階 |
営業 (歯科医院) |
○ | Is値等は判決文上不明 1階から7階までの全ての階での強度・靱性が低く、 地震による倒壊・崩壊の可能性があるとのこと。 |
社団法人岡山建築士事務所協会 | 1億524万円余 | 耐用年数は10年で直ちに使用不可 となる事情は認められない。 |
14 | 東京地判平成25年6月14日 (WL:2013WLJPCA06148012) |
認容 | 4130万円 (借家権価格の50%) |
昭和36年頃2階建(2度増築) (木造、鉄骨造及び鉄筋コンクリート造という異種構造建物が エキスパンションジョイントなしに一体化) |
営業 (ゲームセンター) |
○ | 鉄筋量の不足。 建物の重量・剛性のバランスを設計に反映していない。 左記の構造上の問題などから耐震補強ないし全体の建替えを要する。 Is値等は判決文からは不明。 |
建築士 | 1億3650万円 | ・敷地の指定容積率に比して有効利用されていない ・耐震工事には建物の現在価値を上回る費用を要し、耐震補強工事は合理的ではないと述べてい る。 ・新築した4階建の建物の1階と2階部分は被告に優先的に賃貸するとのオファーあり。 |
15 | 東京地判平成25年4月16日 (WL:2013WLJPCA064168005) |
認容 | 720万円 | 昭和29年6月 木造瓦葺2階建 |
住居兼店舗 (青果小売) |
○ | Iw値:最大で0.61、最少で0.08。 1階の建物長辺方向の耐力壁が少なく 中規模地震でも倒壊の可能性がある。 |
㈱アール免震建築企画 | 補修には規模範囲が広く大きいため、 新築とほとんど変わらない費用がかかる。 |
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16 | 東京地裁立川支部判決 平成25年3月28日 (判例時報2201号80頁) |
認容 | 無し 原告は ①高幡台団地の他の住宅に住み替える場合、 ②原告が管理する他団地に住み替える場合、 ③原告が管理する住宅以外に住み替える場合の3つの場合に分けて、 転居先のあっせん、 移転費用の負担等のオファーをしている |
昭和46年5月20日 UR高幡台団地73号棟、地上11階建、 A棟とB棟の2つの建物あり |
住居(7名の被告) | ○ | Is値平成11年、A棟:11階の0.8を除き 他は0.5以下。6F~7Fは0.3未満。 B棟:全ての階 0.46 以下、5F~8F は 0.3未満。 平成17年に1階につき耐震改修工事を行い、 A棟は0.63、B棟は0.6 と改善されている |
原告(UR) | 合計7億5000万円耐震改修工事を行った場合、 日照・採光・通風・景観・圧迫感を感じるほか、1階店舗の出入りにも支障を来す。 被告側からは耐震改修工事が可能との意見書が提出されている。 |
・耐震改修の方法は建物の所有者の決定すべき事項があり、 耐震改修が経済的合理性に反するとの結論に至り、 これを断念しても、その判断過程に誤りや裁量の逸脱がなく、 賃借人に対する相応の代償措置が取られている限りは賃貸人の判断が尊重されるべきである。 ・賃貸人の修繕義務は、賃貸借契約の締結時に設備されているが、 設備されるべきものとして契約の内容に取り込まれていた目的物の性状を基準として、 その破損のために使用収益に著しい支障を生じた場合に、 使用収益に支障のない状態に回復すべき作為義務をいうのであって 契約締結時に予定されていた目的物以上 のものに改善することを賃借人において要求できる権利まで含むものではない。 |
17 | 東京地判平成25年1月25日 (判例時報2184号57頁) |
認容 | 6000万円 | 昭和49年9月10日 鉄筋コンクリート造 |
営業 (歯科医院) 被告のみ賃借 |
○ | 1階部分のIs値は X方向0.35、Y方向0.45 (耐震壁が少なく耐力が小さい。) 柱の一部が短い柱で靱性指数(F値)が0.8 |
大成建設 | 被告届出の意見書でも少なくとも1000万円。 またその他の修補費用もかかる。 |
・本件建物の賃料収入年間約302万円に対し、 年間約 840 万円の税金であるので、 耐震工事を行って使用を続けることに疑問がある。 ・原告には分譲マンションを建築する計画がある。 |
18 | 東京高判平成13年7月31日 (控訴事件) (D1-Law.com 判例体系: 28162482) |
原判決一部変更 | なし | 建築後40年経過 | 営業 (事務所、仮眠室、車庫) (他は退去) |
○ | 静岡県の耐震判定のレート表によりランクEに相当。 詳細は不明 |
社団法人静岡県建築士事務所協会 | 不明 | 正当事由の補完としての 立退料は要しないとして一審判決を変更 |
19 | 東京地判平成7年10月18日 (判例タイムズ919号163頁) |
認容 | 2億2500万円 (借家権価格) |
昭和35年 軽量鉄骨亜鉛メッキ鋼板葺3階建 |
営業 (店舗) |
○ | 保有水平耐力評価は3階X方向を除き、 0.19~0.43 |
不明 | 判決文上は試算した形跡は認められない 。昭和56年改正の新耐震基準に合わせた補修は 建物の構造上できない。 |
・現状の建物につき耐震工事の要否は判断されていない。 また、原告の新建物建築計画についても具体的設計は確定していないと述べており、 自己使用の必要性も認定していない。 ・従って、借家権の買取に大きなウェイトがかかった判断と思われる。 |
20 | 東京地判平成3年5月3日 (判例タイムズ757号255頁) |
認容 | 8億円 | 昭和4年 鉄骨鉄筋コンクリート造 |
営業 (工場及び事務所) |
○ | Qun(必要保有水平耐力) /Qu保有水平耐力は2F~4Fで1.0未満/1F~2Fでは0.7以下 |
不明 | 判決文上試算した形跡が認められない。 但し、「補強のため相当高額の費用を要する」と述べている |
老朽化が進んでいる建物につき、 賃貸人に高額の補修費用を負担させることは酷であり、 土地の有効利用の点から建替えが経済的と述べている。 |
21 | 東京地判平成28年2月29日 (WL:2016WLJPCA02298004) |
認容 | 2069万1658円 | 昭和49年6月10日(ビルの詳細不明) | 営業(事務所) | ○ | 耐震診断を受けているとの事実が認定されているが 判決においてIs値に依拠した判断はしていない |
㈱ラックランド | 不明 | ・従来の原被告間のやり取りから被告において使用する必要性は低いと判断されたもの ・他の認容事例と異なり、賃借人は断固として立退きを拒否したものではないように見受けられる。 |
22 | 東京地判平成28年1月28日 (WL:2016WLJPCA01286016) |
棄却 | 原告は8億円をオファー | 昭和49年3月31日地下1階、地上6階、 表参道の一等地のビル |
営業 (ブランド衣料品の旗艦店) |
○ | 原告側は3社、被告側は1社の耐震診断を提出し、 それぞれ結論が分かれている。 CIM社:X 方向は6階を除きいずれも0.6を下回り、 Y方向は5階と6階を除き0.6を下回る。 またコンクリートの圧縮強度は設計図書の強度を満たしているのは4階のみ、 他の階は全て下回っている。2階は低強度コンクリート。 JSCA社:X方向は6階を除きいずれも0.4以下でY方向は2階以上が0.4で あることを除き 他は0.6以上。日本ERI社:X方向は6階を除きいずれも0.4を下回り、 Y方向は全ての階が0.5以下。 司構造計画社:X方向は6階を除き0.53以下で Y方向は2階(0.41)を除きいずれも0.6以上 |
原告(2回)被告双方が委託 原告:CIM (更にJSCAにCIMの報告書の内容の妥当性の判定を求めている) 及び日本ERI 被告:司構造計画 |
1億1000万~7820万円 CIM社及び司構造計画の見積による |
・被告主張によれば 本件ビルの実 質的所有者は投資ファンドとの こと。 ・CIM 報告書は安全側に立って 審査した結果 「震度 5 強で倒壊 の恐れがある」 としているが早 急の取り壊しや建替えを求める ものではなく、 利便性・機能性 に支障は生じるものの 補強工事 によって対応できると認めてい る。 ・月額賃料が約460万円で被告も 補強工事につき応分の負担をす る旨を表明している。 ・従って補強工事に費用対効果が ないという訳ではなく 本件ビル は社会的経済的効用を失ってい ない。 ・原告は本件ビルを取り毀し新築 するビルに被告を入居させるこ と につき極めて消極的態度を示 している。 (一方的に立退きを迫ることは 許されない。) |
23 | 東京地判平成27年11月18日 (WL:2015WLJPCA11188010) |
棄却 | 原告はY1に536万円、 Y2に1000 万円、 Y3に1800万円をオファー |
昭和49年2月11日 (建物は不詳) |
営業 (自動写真機、景品交換所、 すし屋、ラーメン屋) |
○ | 全ての階で0.6を下回っている。 q値が基準を下回っているとの結果であるが、 1カ所のみの目視で隅肉溶接を前提としているのは 不十分と裁判所に批判されている。 もっとも裁判所は本件建物が日の字柱を使用していることから 耐震強度が基準値を下回り 倒壊の危険性があるとの判定は相当と結論付けている。 |
アトリエデック 一級建築士事務所及び日本ERI |
9000万円との見積が提出されているが 詳細な検討がなされていないと批判されている |
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24 | 東京地判平成27年9月17日 (WL:2015WLJPCA11188010) |
棄却 | 和解協議では 12億5000万円をオファー |
内部で繋がった2つのビルのうち 1つが耐震性で問題となった 昭和49年3月 柱が鉄骨鉄筋コンクリート造、 梁が鉄骨造、壁と床が鉄筋コンクリート造 |
営業 MS法人の事務所(Y1)診療所(Y2) |
○ | 第3次診断法 Is値: X方向3F,1F0.3未満、 Y方向 5F, 3F0.3未満、 0.59を上回るのは9FのX方向、 q値:1F0.64、他は1.0以上 |
大成建設㈱ | 大成建設による補強工事案は作成されているが、 工事費を明らかにする資料はない。 |
・東京都より耐震改修又は建替え の依頼あり。 ・耐震補強工事を行うにしても 容 積率超過を解消するための減 築、 附置義務駐車確保のための 駐車場 の復旧を行う必要があ り、 耐震工事を行うためには本 件賃貸借の継続が困難である。 ・従って原告に建替えではなく耐 震補強工事を強いるのは経済的 合理性を欠くと述べながら、 更 新拒絶をした時点で 具体的な建 築計画がなく、 被告らの使用の 必要性が高いことを理由に 正当 事由は認められないとしてい る。 |
25 | 東京地判平成27年7月16日 (WL:2015WLJPCA07168010) |
棄却 | 原告は300万円をオファー | 昭和37年1月15日より前に 平屋建で建築され昭和38年に2階が増築された |
営業 (もつ焼) |
○ | 評点0.3Is値、q値は不明 | 一般社団法人 すみだまちづくり協会民間建物耐震診断評価委員会 |
150万~300万円位 | |
26 | 東京地判平成27年2月12日 (WL:2015WLJPCA02128011) |
棄却 | 大正13年建物の詳細は不明 | 営業/住居 (1Fはタクシー営業所) |
○ | X方向(東西) 0.47、Y方向(南北)1.67 | 不明 (精密診断) |
約207万円 | ・耐震性能において取り壊しが不 可避とは言えない。 ・原告は取得して 1 か月後に新築 計画を作成させているので 立退 きを拒まれる可能性を十分認識 していた。 |
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27 | 東京地判平成25年12月25日 (WL:2013WLJPCA12258042) |
棄却 | 昭和53年12月賃貸マンション | 住居 | ○ | Is値不明(恐らく0.6未満) 震度6弱程度で構造体に損傷が発生する可能性が高い |
不明 | 不明 | 耐震工事の可否や費用につき 何 ら具体的主張立証がない。 また建 替えをする能力の立証もない。 |
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28 | 東京地判平成25年12月24日 (WL:2013WLJPCA112248001) (判例時報2216号76頁) |
棄却 | 原告は2985万円をオファーしている | 昭和41年11月15日 鉄筋コンクリート造5階建 |
営業 (レストラン) |
○ | 鹿島建設の簡単診断によれば Is値 :X方向では1F~5F 0.6 未満。 また訴提 起後診断によれば Is値はX方向では2F~5F0.3未満 |
鹿島建設(簡単診断) 及び訴提起後の診断 |
8500万円 (鹿島建設の見積) |
・耐震性能を理由に取り壊しが不 可避とは言えない ・原告は取り壊し後駐車場として 利用するとのことであるから 自 己使用の必要がなく、 もっぱら 取り壊しの必要性の有無にかか るが、 取り壊しは急務とは言え ない。 |
29 | 東京地判平成25年10月25日 (WL:2013WLJPCA10258028) |
棄却 | 昭和59年木造2階建 | 営業 (南側:1F作業場、2F仮眠場所、 北側:1F店舗、2F住居) |
○ | 1階南北方向0.17(最小値)、 上部構造の評点 1F南北方向 0.17、 東西方向0.66、 2F南北方向 0.64、東西方向 1.29 |
ダイヤ一級建築士事務所被告 も建築士の意見書提出 |
230万円 | 補修工事が困難ではなく その費用も1人分の立退料の申出額と大差ないので正当事由は認められない。 |
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30 | 東京地判平成25年2月13日 (WL:2013WLJPCA02138008) |
棄却 | 昭和30年11月頃 鉄筋コンクリート造4階建 |
営業 (喫茶店及び歯科診療所) |
○ | 1階X方向 0.309、Y方向0.302、 2階X方向0.492 |
不明 | なし | ・本件ビルを取り壊すことなく、 耐震工事をすることが技術的・ 経済的 に不可能との証拠がな い。 ・建替えの予定がなく、 賃貸人の 自己使用の必要性がない。 |
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31 | 東京地判平成27年2月25日 (判例時報2201号) |
棄却 | 昭和56年4月20日 鉄骨鉄筋コンクリート9階建(被告は地下1階 部分を賃借) |
営業 (飲食店) |
○ | Is値:1F部分Y方向0.51、 CtuSD 値、2F0.21, 3F0.20。 大部分の階では Is値CtuSD値ともに指標値を超えている。 |
不明 | 耐震工事を必要最小限とすれば、 3664万5000円 |
本件建物の耐震性能は 新耐震基 準に照らせば不十分であるが、 建 替えを必要とする程度ではない。 |
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32 | 東京地判平成28年4月8日 (WL:2016WLJPCA04088010) |
棄却 | 大正年間木造 「貫工法」という伝統的工法によるもの |
営業 (ダイニングバー) |
○ | 不明。 但し、被告も建築士に意見を求め危険建物ではない という意見を得ている。 |
不明 | 不明 | ・平成12年に大規模な改装工事 ・原告側の報告書では構造躯体の 劣化の程度や耐震性の不足の程 度は不明 ・原告が土地の有効利用をする必 要性 も認められない |
一般的に、どのような方法で耐震改修を行うかの判断については、基本的に建物の所有者である賃貸人が決定すべき事項であり、その判断過程に著しい誤りや裁量の逸脱がなく、賃貸人に対する相応の代償措置が取られている限りは、賃貸人の判断が尊重されます。
つまり、耐震補強で済ませるのか建替えをするのかは、基本的にその判断は賃貸人がすべきであり、その判断が著しく誤ったものでなければ正当事由とされることが多いです。
オリエンタル法律事務所では、不動産案件に集中的に取り組み、老朽化した建物に関す建物明渡事件に関する経験を蓄積しておりますので、一度ご相談いただければと思います。
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