不動産事業をしていると、賃貸マンション・アパート経営には「30年一括借り上げ」等の家賃補償をうたう広告をよく見かけると思います。
たしかに、不動産を経営して継続的に賃貸収入を得たい場合には、いかに空室率を低くして、賃料の支払いを受けるかが重要です。
サブリースを利用すると、実際の入居率に関わらず、毎月一定の借上げ家賃収入が見込めるため、収入が安定しますが、注意点も多いため、利用の際には注意が必要です。
オリエンタル法律事務所にもサブリース契約を締結しながら、当初決まっていた賃料が入ってこない、解除できないなど詐欺まがいの案件のご相談をいただくことも多いです。
以下では、オリエンタル法律事務所の事件の蓄積をいかし、賃貸経営で活用できる、サブリース契約と注意点を説明します。
不動産の収益物件の管理には3つの形態があります。
自主管理は収益物件の賃貸人がすべての管理業務を自分で行う管理形態です。
管理費用などが抑えられますが、自分ですべての不動産管理業務を行わなければならず、負担が大きくなります。
不動産管理業務を不動産管理会社に依頼するものです。不動産の管理方法として1番割合が多い手法だと思います。
一般的な管理委託の場合には、賃貸人が不動産管理会社に支払う報酬は、家賃収入の5%未満になることが基本です。
サブリース会社が収益物件の賃貸人から不動産をまるごと借り上げし、それをサブリース会社から入居者に転貸をする不動産管理形態です。
サブリース会社が空き部屋の有無にかかわらず、賃貸人に賃料、いわゆる保証賃料を支払いします。一般的に、保証賃料は実際の家賃収入のおおよそ80~90%に縮減されることが多いです。
サブリースの場合には、一般的な管理委託であれば管理委託料が賃料の5%であったのに対して、10%ほどになることが一般的です。
家主は賃借人から直接家賃の支払いを受けることがなく、契約期間中、賃借人が入居しているかどうかにかかわらず、サブリース会社から賃料支払いを受けることになります。
このようなサブリースを活用するメリットとしては、
サブリース会社を利用するとき、「家賃30年保証」などのうたい文句に引かれることが多いと思います。
しかし、実際にサブリース会社を契約しても、当初の条件で30年間家賃保証を受けられるわけではありません。
契約条項を確認すれば、「契約2年間」、「保証賃料については2年毎に見直す」などと記載されていることが一般的です。そして、更新の際に、どんどん家賃を下げられることが多いです。
また、契約期間が2年間より長期な場合であっても、サブリース会社は契約途中で賃料減額請求権を行使して、賃料を強制的に減額してくる可能性があります。
なお、契約書内に、賃料減額をしない旨を規定していても、サブリース契約には借地借家法が適用されるため、賃料減額請求権を排除することはできないことには注意が必要です。
サブリース会社の中には、「家賃30年保証」などのうたい文句により長期保証を売りにしている会社を見ることが多いと思います。そのため、賃貸人もサブリース契約が長期にわたって継続していく前提で資金計画を立てることになると思います。
しかしながら、上記①賃料減額のリスクと同様に、契約条項を確認すれば、「契約2年間」と契約期間が限定されている場合、経営状態の悪化によりサブリース会社から中途解約を請求される場合もあります。
賃貸人の方は、サブリース契約締結前に、契約期間、中途解約条項の有無、どういった場合には中途解約が認められるのかを確認することが重要です。
収益不動産は必ず経年劣化しますので、将来のいずれかの時期で修繕工事が必要となります。
そして、修繕するにあたっては、なるべく修繕費の見積もり金額が低い会社に依頼したいところです。
しかし、サブリース会社によっては、サブリース契約において、サブリース会社によるリフォーム業者の指定、〇年後には修繕工事を実施することなどの内容が記載されている場合があります。
賃貸人の方は、サブリース契約締結前に、修繕費の負担割合、リフォーム会社の決定方法はどうなっているのかを確認することが重要です。
サブリース問題として経営破綻したサブリース会社の事例は多く見受けられます。
保証賃料を前提に収益計算をした賃貸人にとって、サブリース会社の経営破綻で受けるリスクは甚大です。
そこで、サブリース契約締結前に、サブリース会社の与信状況についてしっかり情報を収集しましょう
また、サブリース会社の中には、建設会社、不動産デベロッパーなどの子会社であるケースもあります。サブリース会社自体の経営成績は決して悪くなくても、親会社の経営成績が悪い場合、連鎖的に破綻する可能性もありますのでご注意ください。
このように、家主に非常に不安定なサブリース契約ですが、契約の本質は、自ら住むためのアパート賃貸等とは違い、家賃保証というリスクを取って収益を得ようとする事業上の契約であって賃貸借契約ではない、だから借地借家法の適用はないので賃料減額請求権はなく賃料引下げはないのではないかと、サブリース会社と家主の間の賃料減額請求の有効性が争われた事案があります。
最高裁は、たとえサブリース契約であっても、それが建物賃貸借契約である限りは、借地借家法32条1項の賃料減額請求が可能だと判断しました。ただし家賃をどこまで引き下げるかについては、借入金返済事情その他様々な事情を考慮しなくてはいけないと判じました。具体的な賃料については高裁に差し戻され判断がなされます。
オリエンタル法律事務所にてご相談を受けるサブリースに関する法的紛争の多くは、契約時における賃貸人の誤解によるものが多いと思います。
サブリース会社の営業の方から「安心して30年お任せください!」と提案を受けて、「30年間も新築時の家賃が固定で補償される」と勘違いしてしまう賃貸人の方が多いという印象です。
今回は、サブリース契約について解説しました。上手に活用しないと、大きな不利益を受けるおそれがある契約形態です。迷ったときにはオリエンタル法律事務所に相談してみて下さい。
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弁護士 | 佐野太一朗 | ||||
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