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ペット可として賃料の増額

ペット可として賃料の増額

本ページでは、建物賃貸借契約において、利回りを上げるという視点で、ペットの飼育をどう取り決めていくのかという視点で、検証してみます。

まず、ペット飼育を認めるのかどうかですが、基本的には、ペット飼育を許可した方が物件の競争力が上がり、賃料は上がることが多いでしょう。ところが、ペット飼育を許可してしまうと、家屋内の柱や畳等が傷つけられたり、ペットの排泄物で建物の内外が不衛生になったり、ペットの鳴き声等で近隣住民に迷惑をかけるなど、賃貸人にとってもリスクは大きいものとなります。そこで、ペット飼育を許可する場合でも、以下の3つの工夫が必須です。

➀許可するペットの種類・頭数を特定する

➁敷金を多目に徴収し、原状回復費用について、特約を設けておく

➂敷金を多目に徴収し、原状回復費用について、特約を設けておく

まず、①については、当然、無制限にペットの飼育を認めてしまうと、それだけリスクが大きくなりますので、賃貸需要を満たすための最低限の種類・頭数を許可するようにするとよいでしょう。裁判例では、ペット飼育を特に禁止する規定がない場合に、賃借人が敷地に鳩舎を設置し、約100羽の鳩を飼育していることが背信行為にあたるとして、賃貸借契約の解除が認められていますが(名古屋地裁昭和60年12月20日判決)、ペットを禁止しないのであれば、そもそも種類・頭数を特定することでトラブルを予防できたものと思われます。

次に、②についてですが、原状回復費用について、裁判所は、ペットを飼育した場合には、臭いの付着や毛の残存、衛生の問題等があるので、その消毒の費用について賃借人負担とすることは合理的であり、有効な特約であると判断しています(東京地裁平成7年7月12日判決)。ですので、少なくとも、消毒費用を特約で賃借人負担とするのは必須です。これに加えて、壁・付属部品等の汚損・破損の処理、取り換え費用まで一律で賃借人の負担とすることができるかについては、賃借人に通常損耗以上の負担を転嫁させることについて、合理性があって、かつ賃借人が十分に認識していることが必要です。いずれにせよ、ペット飼育がない賃貸借契約の場合よりも、賃借人の原状回復義務の範囲を広げて、それに伴い、預かる敷金の金額も多目にしておくことが望ましいです。

最後に、ペット飼育により、他の賃借人に迷惑をかけるなどして、他の賃借人が退去するなどあっては、利回りを上げるためにペット飼育を許可とした趣旨を没却してしまいます。そこで、次のような条項を契約書に盛り込んでおくとよいでしょう。

(飼い主の守るべき事項)

第〇条 飼い主は、次に掲げる事項を遵守し、動物を適正に飼育しなければならない。

  • □ 基本的な事項
  • ア ペットは、自己の居室又は管理組合等により指定された場所で飼うこと。
  • イ 自己の居室又は指定された場所以外で、ペットに餌や水を与えたり、排泄をさせないこと。
  • ウ ペットの異常な鳴き声や糞尿等から発する悪臭によって、近隣に迷惑をかけないこと。
  • エ ペットは、常に清潔に保つとともに、疾病の予防、衛生害虫の発生防止等の健康管理を行うこと。
  • オ 犬、猫には、必要な「しつけ」を行うこと。
  • カ 犬、猫等には、不妊去勢手術等の繁殖制限措置を行うよう努めること。
  • キ ペットによる汚損、破損、損害等が発生した場合は、その責任を負うとともに、誠意を持って解決を図ること。
  • ク 地震、火災等の非常災害時には、ペットを保護するとともに、ペットが他の居住者等に危害を及ぼさないよう留意すること。
  • ケ ペットが死亡した場合には、適切な取扱いを行うこと。

 

  • □ 他の居住者等に配慮する事項
  • ア 自己の居室又は指定された場所以外で、ペットの毛や羽の手入れ、ケージの清掃等を行わないこと。
  • イ ペットの毛や羽の手入れ、ケージの清掃等を行う場合は、必ず窓を閉めるなどして、毛や羽等の飛散を防止すること。
  • ウ 犬、猫等が自己の居室又は指定された場所以外で万一排泄した場合は、糞便を必ず持ち帰るとともに、衛生的な後始末を行うこと。
  • エ 犬、猫等を散歩させる時には、砂場や芝生等(具体的な場所は、各集合住宅で定める。)の立入りを禁止された場所に入れないこと。
  • オ 廊下、エレベーター等では、ペットは抱きかかえ、又はケージ等に入れ、移動すること。犬、猫には、必要な「しつけ」を行うこと。
  • カ エレベーターを利用する場合は、同乗者に迷惑のかからないよう配慮すること。

そして、この条項に違反した場合には、用法遵守義務違反を理由に契約解除の手続きを進めることになります。ただし、上記各条項に違反している場合に、直ちに解除できるかについては、ケースバイケースであり、通常許容される範囲を逸脱し、賃貸人に容易に回復しがたい損害を与えるなど、当事者間の信頼関係が破壊されている場合にのみ賃貸借契約を解除できるので注意が必要です。その程度に至っていない場合は、まずは警告をすることから始めます。

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