賃料を毎月月末までに支払うという取り決めにしていた場合に、末日の支払いを怠った場合、貸主は受け取れるはずの賃料を受け取れなかったことに加えて、本来であれば、賃料を受け取って有効活用できたのに、それを有効活用できなかったという損失が生じます。
そこで、賃貸借契約書では、通常、賃借人に対し、利回り確保の観点から、支払いが遅れたときに利息のように追加で負担を課していることが通常です。これを遅延損害金といいます。
遅延損害金とは、 金銭債務について、債務者が履行を遅滞したときに、損害を賠償するために支払われる金銭をいいます。
遅延損害金は、通常、金銭債務の額に対して、一定の料率に基づいて、遅滞した期間に比例する方法で計算されます。
遅延損害金の利率には、「法定利率」と「約定利率」があります。
当事者間で合意した利率を「約定利率」といいます。
当事者間の合意で、遅延損害金の利率を定めなかった場合は、民法などの法令に定められた「法定利率」に従って計算します。
約定利率が定められている場合、法定利率よりも約定利率が優先して適用されます。
賃料滞納があったからといって、直ちに賃借人に明渡しを請求できるわけはなく、裁判を起こして、認容する旨の判決を得てから賃借人を退去させなければならなくなります。
さらに、裁判によって明渡請求が認められたにもかかわらず、賃借人がそれでも退去しない場合には、強制執行と呼ばれる賃借人を強制的に退去させる裁判所の手続が必要となり、その場合には弁護士費用、強制執行に必要な執行官に対する日当、執行補助者、鍵業者、荷物保管業者への支払い等々で、高額な立て替え費用が発生してしまいます。
なお、これら費用は債務者へ請求できるものですが、一般的に賃借人及び保証人の資金力の観点から回収が難しいことが多いです。
オリエンタル法律事務所にて、扱った未払賃料を原因とする建物明渡請求事件においても、賃借人から未払賃料や賃料相当損害金を回収することは難しいことがあります。
そこで、賃料を滞納した場合に発生する遅延損害金と呼ばれるペナルティを最大限に活用することで、任意に退去に応じた方がよいと賃借人に考えさせるようにすることが1つの対策となり得ます。
1日でも退去が遅れるとその分の遅延損害金が膨れ上がると考えれば、自主的に早目に出て行こうとする賃借人もいます。
遅延損害金については、賃貸人と賃借人との間の建物賃貸借契約において遅延損害金条項がない場合であっても、法律で定められた利率による損害賠償金が発生します。
これは原則として年5%でしたが(民法第404条)、賃貸人が複数物件を賃貸しており、事業として不動産賃貸業を営んでいる場合など、商法が適用されるケースにおいては、年6%でした(商法第514条)。
現在は、民法が改正されましたので、法定利率は、年3%に引き下げられました。また、この年3%の利率についても、3年ごとに法定利率が見直されます。
未払賃料が発生するリスク、その後の裁判費用等のリスクを縮減させるため、遅延損害金を最大限に活用するべきです。
なお、あまりにも不適切な高い利率を定めることは、公序良俗に反し無効とされる可能性があります。裁判例においては、簡易裁判所の判決ではありますが、年18.25%の遅延損害金利率を有効としたものがあります。
一般的な遅延損害金条項は、次のように規定されます。参考にしてください。
(遅延損害金)第○条
乙(賃借人)は、賃料、共益費その他乙が本契約に基づいて負担する金銭債務の支払いを遅滞したときは、甲(賃貸人)に対し、遅滞の日から支払済みまで、遅滞した金額に対する年14.6パーセントの割合による遅延損害金を支払わなければならない。
オリエンタル法律事務所では、不動産案件に集中的に取り組み、契約関係の明確化に努めておりますので、一度ご相談いただければと思います。
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