不動産投資にあたって、空室リスクを排除するためには、期間内解約をした場合の違約金の特約が有効です。
一般的に、建物賃貸借契約では賃貸借の期間を定める契約形態が多数であり、契約期間を定めることにより、賃貸人は賃借人に賃料を負担させ、賃貸期間の賃料収入確保を見込んでいます。それにもかかわらず、賃借人に中途解約されると、賃貸人が賃貸借期間に予定していた賃料収入の減少を及ぼします。
そこで、賃貸借契約の違約金条項を定めることで、このような賃貸人の損害を補填することが可能となります。
具体的には、「借主が本契約を期間満了前に中途解約する場合、借主は貸主に対し、本契約が中途解約により終了した日の翌日から契約期間満了日までの賃料相当額を違約金として支払わなければならない」などと規定します。
もっとも、賃貸借契約が途中で解約されて、実際に賃借人が使用収益していないにもかかわらず、あまりに長期の賃料相当額が違約金として請求できるのでしょうか。
検討するにあたっては、賃借人が一般消費者であるか、賃借人が法人であるかを区別する必要があります。
賃貸借契約において、賃貸人と賃借人の契約の約定は、原則として契約自由の原則により、当事者の合意があれば自由に設定することができるため、中途解約の違約金条項も有効となります。
ただし、違約金の約定額が高額で、賃借人に不利益な場合は、消費者契約法により、一定額以上の部分の違約金額は無効(同法第9条第1項)となることがあることに留意しなければなりません。
この点、期間の定めのない賃貸借の賃借人からの解約の申入れは、申入れの3か月後に賃貸借期間が終了し、即時賃貸借契約を終了させるためには、賃料の3か月相当分の支払により終了すると解されます。
したがって、中途解約違約金を賃料の3か月相当分までは合理性があります。
賃貸借契約で、賃借人の1年未満の解約の場合は、賃料の2か月相当分の違約金とする、中途解約特約を認めながらも、一般の居住用建物の賃貸借契約では、中途解約で支払うべき違約金額は賃料の1か月分とする例が多数であり、次の入居者の募集期間を考慮しても、解約により賃貸人が受けることがある平均的な損害は賃料の1か月相当額であると認めるのが相当であるとする裁判例があります。
事業用建物賃貸借契約では、賃借人が中途解約したときの違約金は、賃貸人が新たな賃借人を確保するまでの間、建物を有効利用できないことによる損害を賠償する趣旨で定められ、賃借人の違約金支払の特約は、賃貸人と賃借人間の合意により、約定自体は有効です。
事務所や店舗等の事業用建物の賃貸借においては、賃貸人が次の賃借人を確保するのに期間を要するものも多いため、賃借人からの中途解約は、3~6か月前予告にする特約が一般的です。
ただし、4年の期間を定めて事業用建物賃貸借契約をした賃借人が、入居後10か月での中途解約で、賃貸人が賃借人に、期間満了までの3年2か月分の違約金の支払を賃借人へ請求した争いで、「賃貸人が早期に次の賃借人を確保した場合には事実上賃料の二重取りに近い結果になるから、諸般の事情を考慮した上で、公序良俗に反して無効(民法第90条)と評価される部分もある。」とし、全額の請求は認めず、10か月分を超える違約金の額については、無効とした裁判例があります。
普通建物賃貸借契約において、賃借人から一定の予告期間を設けて中途解約ができる特約条項がなければ、普通建物賃貸借では、賃借人から中途解約はできません。
他方、定期建物賃貸借については、①事業用建物、または②居住用建物で床面積が200㎡未満のものに限り一定のやむを得ない事情があれば、1か月の予告期間で解約ができます。
そのため、定期借家契約における事業用建物または200㎡以上の居住用建物を賃貸する場合に、中途解約条項さえ設けなければ、賃貸人の契約期間中の賃料収入への期待は保護されることになります。
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