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不動産法務realestate

修繕義務転嫁特約(賃借人修繕負担特約)

1 修繕義務

原状回復に似た特約として、修繕特約というものがあります。原状回復特約は建物明渡時の原状回復に関する特約であるのに対し、修繕特約は賃貸借契約継続中の毀損・汚損の修繕に関するという点で異なります。

2 修繕義務の転嫁

賃貸建物の使用及び収益に必要な修繕をする義務は賃貸人が負うというのが民法の原則です。

しかし、同規定は任意規定であり、賃貸借契約の当事者間で本条と異なる特約をすることは可能です。

例えば、賃貸人が修繕費を賃借人の負担とする特約又は賃貸人が修繕義務を負わない特約も有効であると考えられます。

 

そこで、上記のような特約を定める場合には以下の事項に留意する必要があります。

 

  • ①賃借人の修繕権の行使条件・範囲、費用負担、手続(賃貸人に対する通知、修繕箇所確認のための立会い、修繕工事の発注方法等)を明確にしておくこと
  • ②賃借人に過度に不利な特約は消費者契約法10条に基づいて無効となるおそれがあることに留意すること
  • ③修繕が必要となったのが賃借人の責に帰すべき事由によるものであった場合は修繕費用を賃借人に負担させる規定を置くこと

 

一般的に、修繕の内容・費用の程度から、大修繕と小修繕に区別され、大修繕は賃貸人の修繕義務を免れることはできませんが、小修繕については賃貸人の修繕義務を負わない特約も有効と解されています。

 

では、どのような修繕が特約で修繕義務を免除できる小修繕にあたるか説明します。

 

建物の基本的構造部分や生活に必要不可欠の設備の破損・汚損については、修繕費用も多額となり、賃貸人の修繕義務を免除することはできません。

裁判例でも、建物の基本構造に影響すべき現状を変更するような修繕部分は賃貸人の負担すべき修繕義務の範囲に属することが明らかであると判示するものがあります。

それ以外の部分の修繕は、基本的には小修繕に該当すると考えられます。具体的には、電球の取り替え、ふすまや障子の張替え、畳替え等です。

もっとも、個別具体的事情に左右されるため、具体的な修繕の内容や費用の程度をオリエンタル法律事務所まで教えていただけますと幸いです。

 

以上のような点を踏まえると、以下のような契約条項が考えられます。

 

第○条(修繕義務の範囲)

  • 1 賃貸建物が破損・汚損し、使用収益のために修繕が必要となった場合で、次の各号に掲げる場合、賃借人は、修繕のための費用を負担する。
      • ①小修繕に当たる場合
      • ②賃借人の責に帰すべき事由により修繕を要することとなった場合
  • 2 前項の小修繕とは、次に掲げる場合をいう(耐震工事及び建物の躯体等にかかる大規模修繕や増改築を含まない。)
      • ア 畳替えの取り替え、裏返し
      • イ ヒューズの取り替え
      • ウ 襖・障子の張替え
      • エ 電球・蛍光灯の取り替え
      • オ 鍵の交換
      • カ ○○○
      • キ ○○○
      • サ その他修繕に要する費用が2万円以下のもの
  • 3 前第2条の規定することの他賃貸建物が破損・汚損し、使用収益のために修繕が必要となった場合、賃借人は、賃貸人に対して、修繕箇所、修繕の必要性及び修繕見積金額を明示した書面の交付をもって事前に通知した上で、賃貸人から当該修繕について承諾を得たとき、又は急迫の事情があるときに限り、本物件を修繕することができる。

賃貸人が修繕義務を負う場合に相当期間内に修繕を行わないと、その部分について使用収益ができないとして賃料が減額されるおそれもあります。そのため、修繕義務を負う範囲の修繕はできるだけ早く行うことが大切となります。

3 最後に

このように、修繕が必要となったときにその修繕が小修繕に当たるか否か争いにならないためにも、契約条項には小修繕にあたるものを具体的に列挙したうえ、その他の修繕についても修繕費用が一定の金額以下であれば小修繕に当たるとするような定めを置いておきましょう。

オリエンタル法律事務所では、不動産案件に集中的に取り組み、修繕費負担の明確化に努めておりますので、一度ご相談いただければと思います。

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