更新料とは、賃貸借契約の期間が満了し、契約を更新する際に、賃借人が賃貸人に支払う一時金のことをいいます。
民法や借地借家法には、更新料についての規定はありません。法律は、更新料を支払えとも、支払う必要がないとも一切規定していないのです。
更新料は、昭和30年代後半以降に、高度経済成長政策により大都市に人口が急激に集中し、地価が高騰しだした時期に発生しました。
建物賃貸借契約において、更新料を支払うとの特約を付した場合、特約は有効です。 一般的に、通常2年ないし3年の契約期間の満了時に、更新料が支払われるケースが多いと思います。
もっとも、消費者の利益を一方的に害する契約を無効にする消費者契約法第10条には留意すべきです。
消費者契約法10条は、ある契約条項が、①民法上の規定の適用による場合に比べ、消費者の権利を制限し、または消費者の義務を加重し、②信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものである場合、当該条項は無効となると定めています。
そこで、更新料支払特約を定める場合には、以下の2つの点に注意する必要があります。
例えば、以下のような更新料条項は、問題があります。
上記のように、更新料の額が、貸主と借主の協議によって決められると定められている場合には、「一義的かつ具体的」ではないとして、更新料の支払義務が認められなくなってしまう可能性があります。裁判例では、上記のように、貸主と借主の協議の上定めるとされているだけで、具体的な金額が決められていなかったケースにおいて、更新時の旧賃料の2か月分の6分の5に相当する額の更新料の支払義務を賃借人が負うにとどまるとした事案があります。
上記のケースでは、貸主と借主の協議の上定めるとはせずに、以下のように更新料条項を定めておけば、2か月分以上の更新料を請求できていた可能性があります。
以上の裁判例からは、更新料の額については、賃料の1か月から2か月分相当額の金額であれば、問題がないと考えられます。
もっとも、賃貸借契約期間が短いなど、更新料が高額であると考えられる個別具体的事情によっては、判断が異なると考えられます。
上記にて確認した状況は当事者の合意により賃貸借契約が更新されたものでした。 次に、賃貸借契約が法定更新された場合に、賃貸人は、賃借人に対して、更新料を請求することができるか検討します。
法律上、賃貸借契約の更新には、お互いが更新することを合意する「合意更新」とお互いの合意がない場合であっても借地借家法に基づき当然に契約が更新される「法定更新」の2つの種類があります。
例えば、賃貸借契約書において、次のような更新条項が定められた場合、合意更新と法定更新の場合で結論が異なります。
「賃貸借期間満了の場合は、貸主と借主が協議の上この契約を更新することができる。前項によりこの契約を更新する場合には、乙は甲に対し更新後の賃料の1か月分の更新料を支払うものとする。」
合意更新の場合には、上記条項に基づき更新料を請求することができます。
これに対し、法定更新の場合には、上記条項は、お互いが協議の上で契約を更新する場合を対象としており、合意更新の場合のほか、法定更新の場合にも更新料を支払う合意をしたものとは認められないことから、更新料の請求をすることはできません。
このように、法定更新となる場合も想定して更新条項を定めておかないと、更新拒絶が認められないばかりか、更新料すら支払ってもらえなくなるリスクがあります。そこで、更新条項については、以下のとおり、合意更新か法定更新かを問わず、いずれの場合であっても更新料を請求することができるよう工夫しておく必要があります。
「本契約が合意により更新された場合、もしくは法定更新された場合(法定更新後は以後2年ごと)、借主は貸主に対し、賃料1か月分の更新料を支払うものとする。」
また、法定更新がなされた場合、その後の契約期間は期間の定めのない借家契約となりますので、争いがある部分ではありますが、「法定更新された場合でも、2年ごとに家賃1カ月分の更新料を支払うものとする」「法定更新された場合の契約期間は2年とする」などと記載することが望ましいといえます。
このように、契約書の更新料条項に設ける際には、更新料の額を高額にならないように、かつ明確に定める必要があります。
また、合意更新だけではなく法定更新の場合も考えられますので、その場合も予期して契約条項を作成することをおすすめいたします。
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